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WQE

(Waseda Q:Kyudai Endoscope)
  1. WQE-1
  2. WQE-2
  3. WQE-3
  4. WQE-4
  5. WQE-5


1. WQE-1

大きくわけて, 1. 回転慣性型,2. 逆ねじ型について研究を行いました.

1.1. 回転慣性型(Rotational inatia type)

 回転慣性型は小型のDCモータにフライホイールを装着し,さらにそれらを螺旋状のフィンを模した筒で覆うような機構をしています.原理は,モータに取り付けたフライホイールをゆっくりと加速し,フライホイールが高速回転に達したとき,急激に減速させます.これによって慣性力が生み出され,本体自体が回転することで,螺旋形状に従って推進することが可能となります.
  利点として,回転体を高速回転させることにより,大きなエネルギーを蓄えることが可能な点とそれにより大きな慣性力を比較的に連続に取り出すことが可能である点が挙げられます.

1.2. 逆ねじ型(Reverse screw type)

 逆ねじ型は,フィンの螺旋形状のねじ方向が逆になってい る2つのユニットを前後に結合し,前部のユニット内に配置したDCモータによって駆動します.原理としては, ねじ方向が逆のユニットが,モータによって逆方向に回転することにより推進するというものです.
 利点として,連続的な滑らかな運動が生成できるという点が挙げられます.
 現在はこの方式を主に開発しています.

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2. WQE-2

 以下のモデルが2009年に開発したWQE-2です.上記の回転慣性型,逆ねじ型のうち逆ねじ型の流れを汲んでいます.フィン(外装)はセプトンという素材でできていおり,弾性に優れているので,大腸壁を傷つけません. 自由度は以下のようになっています.ユニバーサルジョイントにより,大腸形状に受動的に倣い,湾曲部を走行することができます.

Movies

  1. in vitro 実験
  2. in vitro 実験(湾曲部)

(※ブタの内臓の映像が流れます.苦手な方は注意して下さい.)

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3. WQE-3

3.1.ハードウェア
 上記のWQE-2の走行速度は48.6[mm/min]であるのに対し,実際の医師による手技の速度は
約300[mm/min]であり,WQE-2の速度は十分とはいえない.
 そこで2010年は走行速度を向上させるため,以下のモデルを開発した.
 WQE-3dはモータを2つ直列につなぐことで走行速度の向上を図った.
 WQE-3iはタッチセンサおよび加速度センサを有し,後述する強化学習と組み合わせることで知能化を行い,走行速度の向上を図った.
 また大型化するロボットへのアンチテーゼとして初期シリーズWQE-1を改良したWQE-1Rを開発した.

3.2.御(強化学習)

内視鏡ロボットを大腸内へ挿入する際には,大腸内の特性が分からない点,ロボットの走行自体が環境に影響を与える 点から,大腸内で試行錯誤を通して自らの制御を改善していく制御アルゴリズムが最適だと考えられる.そこで,内視鏡ロボットは強化学習 (Reinforcement Learning)を用いて制御を行っている.強化学習の特徴は以下の通りである.

  • 環境との相互作用で学習を行う
  • 与えられた指示に従って自動的に学習を行う
  • 予期せぬ状況にも対応する

強化学習の中でもアクター・クリティック法を用いて学習を行いました.特徴は下記の通りである.

  • 連続状態で学習が可能
  • プログラムが容易

 死んだブタの大腸おいて,強化学習を用いた場合と用いない場合の動画を下記に示します.
画像をクリックすると逆ねじ型ロボットの挿入動画を見ることが出来ます.
(※ブタの内臓の映像が流れます.苦手な方は注意して下さい.)


強化学習有り
強化学習無し

3.3.評価実験

 in vivoの評価実験を行った結果を以下に示す.

 今回の実験からも,WQE-1Rの走行速度が最も高いことがわかった.
また,WQE-3iについては,強化学習を用いることで走行速度の向上が確認できたが,
WQE-1Rの走行速度には及ばないということがわかった.

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4.WQE-4


 WQE-3シリーズまでは,アクチュエータとして電動モータを利用しています.WQE-4では侵襲性の観点から,空気圧駆動 のアクチュエータ,吹き戻し型脚を用いた,内視鏡ロボットを開発しました.

4.1.吹き戻し型脚


 以下に開発した吹き戻し型脚を示します.このアクチュエータは『吹き戻し』という玩具から着想を得ています.上段が通常 時,下段が加圧時です.加圧し脚を伸ばして壁面を蹴り推進力を得ます.


Movie

   

4.2.ハードウェア


 上記脚を実機に実装するに当たり,脚を複数本まとめてモジュール化しました.モジュールは姿勢制御(OC)モジュールと 推力発生(TG)モジュールの2種類に分けられます.OCモジュールは脚を3本有し,それぞれ独立に駆動します.TGモジュ ールは脚を4本有し全ての脚が同時に駆動します.また,WQE-4の先端にはカメラがついており,その映像を基にOCモジ ュールで先頭の進行方向を制御し,TGモジュールで推力を発生させます.

   
WQE-4の脚にはシリンジポンプを用いて空気を供給しています.以下にシリンジと脚の対応関係を示します.
 

Movies

OC_module
TG module

4.3.評価実験


 WQE-4を大腸モデル内200[mm]走行させました.走行コースは直線と,弯曲(R=140[mm],90[deg])の2種類を用意しました. 途中でスタックして10[s]以上その場から動かない場合は失敗とみなしました.

 


 以下に走行速度の結果と成功の確率を示します.この結果からわかるように大腸モデル内においてWQE-4の有効性を 確認できました.

 

Movie

 

in colon simulator

 

4.4.今後の展望


 今回の実験では,6回の試行の平均値としては要求仕様の5[mm/s]を実現しましたが各回ごとのばらつきが大きく安定 した走行を実現できていません.特に弯曲部においては走行が成功する確率は100%ではなくその傾向が顕著です.弯 曲部においても安定した走行を実現する必要があると考えています.また,今回の実験では,大腸モデルを使用した実験 を行いました.今後実用化に向けてより臨床に近い環境での実験を行う必要があると考えております.具体的には死ん だブタの大腸でWQE-4の有効性を示す事が出来ればいいと考えています.

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5.WQE-5


 WQE-5では,新たに開発した3自由度パラレルリンクによる能動屈曲機構とWQE-4でに実装された吹き戻し脚による推力発生機構を融合させ,屈曲部での移動能力の向上をはかりました.

5.1.能動屈曲機構


 今回作製した3自由度パラレルリンクによる能動屈曲機構を下図に示します.
 こちらの能動屈曲機構の動作媒体は空気圧で,直動機構にはステンレス製の金属シリンジを使用しています.シリンジの寸法は内径4[mm],長さ12[mm]となっています.受動回転自由度はベース側・エンドエフェクタ側共に3Dプリンタで作成しました.


5.2.ハードウェア


 WQE-4に実装されていた吹き戻し脚による推力発生機構,前述の能動屈曲機構,および小型カメラを搭載したものがWQE-5となります.機体写真とシステム構成を下図に示します.図に示す4つのシリンジポンプのうち,容量50[ml]のものは推力発生機構への送気に使用し,容量20[ml]のものは能動屈曲機構の各直動自由度であるシリンジへの送気に使用しています.これらのシリンジポンプを協調的に動作させることで,WQE-5では直線部ならびに湾曲部での移動を実現しています.


Movies

推力発生機構
能動屈曲機構


5.3.評価実験


 大腸モデル内をWQE-5に200[mm]走行させました.走行コースである大腸モデルは内径50[mm]であり,弯曲半径R=140[mm]で弯曲させました.前述の能動屈曲機構によってWQE-5の屈曲角度をさまざまに変化させて走行実験を行い,屈曲角度と走行速度の関係を調査しました.各試行では,大腸モデル内の弯曲の開始部分にWQE-5を設置し,30[s]走行させて進んだ距離から速度を算出しました.


 WQE-5の屈曲角度θは以下のように変化させて測定しました.

 
以下にWQE-5の屈曲角度と走行速度の結果を示します.
 
 


 グラフより,屈曲角度θが5[deg]のときWQE-5の速度は最も早くなっていることが分かります. 屈曲角度θが5[deg]のときθが0[deg]のときよりも速度が速いことから能動屈曲機構の有効性が示されました.また,θが74[deg]のときθが0[deg]のときよりも遅くなっていることから,屈曲角度は大腸の弯曲に沿った角度にする必要があることが分かります.

 
 

5.4.今後の展望

 


 臨床からの期待に応えるには,現在のWQE-5の移動速度では不十分であり,一層の向上が必用不可欠です.今回,制御の最適化が十分ではなかったので,今後,最適化によって移動速度の向上をはかります.
 また,今回の実験では大腸モデルによる実験のみでWQE-5の性能を評価していたので,今後は動物実験によって性能評価を行い,臨床応用に近づいていければと考えています.

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