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気管挿管班
WKA-1 ( W aseda K yotokagaku A kagaku - No. 1 ) |
1.研究背景
![]() 気管挿管は,心肺停止,酩酊状態,昏睡状態,多発外傷などが原因で塞がった気道を確保し,酸素を肺まで供給するための医療手技であり,さらには多発外傷による出血と胃異物から肺を保護する効果もある(Fig.1).しかしながら,気管挿管は救急医療の基本手技であるにもかかわらず,多くの医療事故が発生している.
2.機構 2.1 WKA-1 ![]()
気管挿管訓練用頭部モデルは頭部モデルとノートパソコンから構成されている(Fig.2).頭部モデルは頚部,胸部,頭部,切歯部,舌部,声帯部,そして気道部の7部位からなる.各部位はそれぞれ,解剖学的所見にもとづいて設計した.また各部位には,力検出センサ,物体検出センサ,変位検出センサおよびポテンショメータを実装した(Fig.3).
2.2 センサシステム ![]() 2.2.1 力センサシステム(FDSS) 力センサシステムはフォトインタラプタ, 弾性スポンジ, そして白色のプラスチック反射板で構成されている(Fig.4). 力センサシステムは反射型フォトインタラプタを使用し,弾性スポンジの弾性変形を読み取るようになっている.フォトインタラプタは最初に発光素子から出た光が反射物により反射し,受光素子がその光を受け取る.ここでは,外力による弾性スポンジの変形で,反射物とセンサとの距離が変化し,受光量が変わることにより電流が変化する.そしてこの回路に抵抗を接続し,電流量の変化を電圧の変化に変換することで,外力の変化を電圧値の変化として計測することが可能なセンサ系を実現した.
2.2.2 位置検出センサシステム(PDSS) 物体検出システムは内面が黒色で塗装された円筒とそこに一列に配置されたフォトインタラプタから構成されており,円筒内に挿入された物体の検出を可能としている(Fig.5).基本原理は次のようになる.挿入物がない時はフォトインタラプタの発光素子から出た光は黒色の壁面に吸収され,受光素子に入る光の量に変化がなく,電圧の変化が無い.一方,挿入物がある時は,発光素子から出た光は挿入物に反射するため受光素子に入る光の量に変化が生じ,それによって電圧が変化する.0.3[V]の閾値を超える場合は物体があるとして,0.3[V]の閾値以下の場合は物体がないとする.このような原理で動作する13個のフォトインタラプタを一列に並べて設置することで,円筒内に挿入された物体の位置が検出できる
2.2.3 変異検出センサシステム(DDSS) 変位検出センサシステムはフォトインタラプタ,そして弾性のある反射板で構成されている(Fig.6).センサシステムの原理は,力センサシステムとほぼ同様である.このセンサは,荷重によって生じる弾性反射板の変形を力検出システムと同様の方法で検知する.
3.実験結果 ![]() 気管挿管訓練用頭部モデルを用いて気管挿管訓練の実証実験を行った.被験者は,麻酔科医7人と学生5人の計12名とした.Fig. 9には麻酔科医,学生それぞれの,挿管に要した時間,挿管時に切歯に加えられた荷重,開口角度,舌部および声帯に加えられた荷重を示す.
挿管時間については,Fig.8.eのように麻酔科医は30[s]以下であったのに対し,学生は30[s]以上であった(P<0.05).切歯部については,麻酔科医はほとんど力を加えなかったのに対して,学生は力を加えながら喉頭展開を行った(P<0.05).舌部は,麻酔科医は2番と5番のFDSS(Fig.8.a,Fig.8.b)二力を加えながら喉頭蓋が開いている状態で舌を持ち上げ,気管チューブを挿入している事が確認された.
声帯部はチューブにより声帯部の動きを式(1)のように定義する.(t:気管挿管時間,x:声帯移動距離)この式により,麻酔科医はチューブによる左側声帯の動きが少なかったことに反して学生は麻酔科医より大きかった(P<0.05)(Fig.8.f).この実験により,挿管時間,切歯部,開口部,舌部,そして声帯部を評価パラメータとして決めることとした.
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