オーラル班の紹介

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柔軟アクチュエータ班


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1.はじめに

2.試作機

 2.1 2011年度  2.2 2010年度  2.3 2009年度

3. 謝辞






1. はじめに

  近年,ヒューマノイドを人体シミュレータとして用いる研究が注目を集めています. 例えば,2足歩行が可能なヒューマノイドの開発をとおして,ヒトの歩行のメカニズムの解明を目指す研究や, 人体を精緻に再現したヒューマノイドを医学教育に用いる研究などが進められています. これらの研究は,今後,医療福祉分野の発展に大いに貢献するものと期待されます. しかし,これらの研究におけるヒューマノイドの動力源であるアクチュエータは,主にDCモータが使用されており, ヒトの筋特性とは大きく異なります.そのため,筋単位でのヒトの動きを再現することはできません. そこで,より厳密なシミュレータとしてのヒューマノイドの開発のためには,従来のものではなく, 直動方向に駆動可能なアクチュクエータの開発が必要だと考えられます. そこで,われわれは上記を実現できる小型なアクチュエータの開発を目的に研究を行っています. 小型なアクチュエータを開発することで,それらを直列接続させた際,多間接的に柔軟性を実現することができ, 医療や福祉用のヒューマノイドだけでなく,教育用のヒューマノイドにも有用であると考えています.

HP目的.jpg(131395 byte)

Fig.1 Background


2 試作機

2.1 2011年度

2.1.1 ハードウェア

  われわれが開発した柔軟アクチュエータのハードウェアはFig.2のようになっております. 本研究では駆動源として,ワイヤ型のSMA(形状記憶合金(古河マテリアル株式会社製))を使用しています. このSMAは高発生力で収縮応答性が良く,また無通電時には非常に柔軟であるといった特徴を持っている反面, 筋肉の収縮率が20%であるのに対してこのSMAの収縮率は5%しかありません.そこで,この弱点を克服するため, 変位増幅機構を開発しました.以下に,変位増幅機構に関して説明します.


2011soft actuator_measure.jpg(35708 byte) 2011softactuator_separate.jpg(30263 byte)
Fig.2 Hardware(2011-2012) Fig.3 components(2011-2012)


2.1.1.1 変位増幅機構-原理

本機構の原理は線状SMAの1端を剛体リンクに接続,他の端を別の剛体リンクに接続し, それらを複数段重ねることで,エンドエフェクタに変位を生じさせる構成となっています. 各剛体リンクはx軸方向にのみ変位が生じるよう,ガイドにより動作を拘束しており, 各線状SMAに通電すると,それぞれの線状SMAには5[%]の変位が生じます.その結果,エンドエフェクタには, 全ての線状SMAの変位が累積してあらわれます.(Fig.4参照)
構成部品名称を示した図をFig.5に示します.



2011メカニズム.jpg(22453 byte) 構成部品一覧.jpg(56088 byte)
Fig.4 Displacement amplification mechanism Fig.5 Components of prototype


2.1.1.2 変位増幅機構-設計

この機構では,剛体リンクに高電気伝導性を有する細径パイプを用いています. これにより,一本の線状SMAのみでユニットを組み上げることが可能となっております(Fig.6).なお, 細径パイプ内の線状SMAは,細径パイプと電気的に並列に接続されることにより,電流がほとんど流れず, 変位も生じません.上記と共に,Fig.5のようにパイプを同一円周上に配置しガイドの形状を円形とすることで, 小型化を図っていると同時に機構全体のねじれを抑制,出力軸の統一を実現しています.
円形配置を実現するにあたってガイドとSMAの干渉を防ぐため,Fig.7のようにガイド内には線状SMAの経路に 沿った溝を設置しております.



パイプ&SMA.jpg(18816 byte) 溝設置部.jpg(17477 byte)
Fig.6 pipe and SMA Fig.7 root of SMA

動作動画
Lifting load(130gf)
MPEG1 2.84 MB

2.1.2 制御系の構築

  SMAアクチュエータユニットを直列に接続して駆動するための回路を考案しました.Fig.8に回路図を示しております. SMAは極性によらず通電,無通電を切り換えることで収縮,伸長をするという特性を有している, この特性を利用し,EX-OR論理素子,あるいはソフトを用いたシミュレーションによりコントローラから 出力されるPWM信号を切り替えることで,通電するSMAの組み合わせを任意に変更できます. この駆動回路の長所は,必要とする配線関連の部品点数がほぼ半数で済む点にございます.

2011control.emf(37075 byte)
Fig.8 EX-OR






2.2 2010年度

2.2.1 ハードウェア

  われわれが開発した柔軟アクチュエータのハードウェアの構成はFig.9,Fig.10のようになっています. 収縮力を発生させる「収縮力発生要素」,ヒトの筋肉の粘弾性特性を再現した「非線形粘弾性要素」 の主に2つの要素で構成されています. 以下,2010年度に製作した試作機の収縮力発生要素と非線形粘弾性要素について説明します.


2011.10coin.jpg(53222 byte) 2011.9coin.jpg(45515 byte)
Fig.9 Hardware(2010-2011) Fig.10 Compornents(2010-2011


2.2.1.1 収縮力発生要素

収縮力発生要素では,ワイヤ型のSMA(形状記憶合金(古川マテリアル株式会社製))を使用しています. このSMAは高発生力で収縮応答性が良い,また無通電時には非常に柔軟であるといった特徴を持っています. しかし,筋肉の収縮率が20%であるのに対してこのSMAは収縮率が5%しかないので,この弱点を克服するために, 変位増幅機構を開発しました.それを以下に示します. 本機構は摩擦係数が非常に低い樹脂製プーリを多段に配置し,そこにSMAを巻くことでSMAの経路を増長する機構です.

メカニズム.emf(639516 byte) 2011.pulley.jpg(4861 byte)
Fig.11 Displacement amplification mechanism Fig.12 Pulley of Φ6mm:Tender by Nikki Fron


動作動画
Lifting load(130gf)
MPEG 1.3 MB

2.2.1.2 非線形粘弾性要素

ヒトの筋肉はその活動レベルが高くなるにともない,筋肉の粘弾性係数も高くなる特性を有しています. その粘弾性特性を再現するために,Fig.13のモデルをたて非線形粘弾性要素を開発しました. なお,本機構にはセプトン(株式会社クラレ製)を使用し, セプトン自身が持っている粘弾性を利用してFig.14のような特性を有していることを確認しました.


Fig.13 Model of nonlinear viscoelastic module Fig.14 Viscoelastic characteristic

2.2.2 制御系の構築

  開発した試作機の力制御の応答性および安定性を向上させるため,ゴルジ腱器官に相当する力センサを開発し, Fig.15に示す制御系を構築しました.制御器には,ニューラルネットワークとPID制御を統合した学習型制御器を用いました. 制御器の入力は,目標発生力と力センサを介してフィードバックされる現在の発生力とし, 出力はSMAへの通電のDuty比としました.制御器内部では,ニューラルネットワークにより, 目標発生力と現在の発生力との誤差を最小化するようPIDの各ゲインの学習を行わせています. Fig.16に学習後の応答性を示したグラフを示します.Fig.16より,学習済みの制御器で前述の収縮力発生要素を制御することで, ヒトの筋肉と同等となる0.1[sec]での応答を実現しました.

control.emf(77812 byte) NN_after.emf(1419668 byte)
Fig.15 Controller with learning system using Neural Network Fig.16 result


2.2.3 アプリケーション

われわれは柔軟アクチュエータの開発とともに,柔軟アクチュエータを組み込んだアプリケーションの開発も行っています. そのアプリケーション試作2号機としてヒトの関節の開発を行いました. 開発した関節モデルの中に柔軟アクチュエータが4つ組み込まれれおり,無通電時には触るだけで簡単に曲がります. 通電時には通電させる順序を変えることで,さまざまな方向へと動くことができます.

Application.jpg(12873 byte)

Fig.17 Arthrosis model


 

動作動画
Arthrosis model
MPEG 1.0 MB



2.3 2009年度

2.3.1 ハードウェア

  われわれが開発した柔軟アクチュエータのハードウェアの構成はFig.18のようになっています. 収縮力を発生させる「収縮力発生要素」,ヒトの筋肉の粘弾性特性を再現した「非線形粘弾性要素」, ヒトの弛緩状態の高いバックドライブアビリティを再現する「ロック機構」の3つの要素で構成されています. 以下,特に収縮力発生要素と非線形粘弾性要素について説明します.



Fig.18 Hardware(2009-2010)


2.3.1.1 収縮力発生要素

収縮力発生要素では,直動型の超音波モータ(テクノハンズ株式会社製)を使用しています. この超音波モータは以下のような特徴が挙げられます.

・小型,軽量

・応答性が良い

・無通電時でも保持力がある

・静音性に優れる

・磁場の影響を受けない

また,超音波モータの移動体と他の要素とをワイヤで接続することにより, ヒトの筋のように屈曲方向の高い柔軟性を実現しています.


動作動画
UltrasonicMotor
MPEG 353 KB
Lifting load(50gf)
MPEG 1.3 MB
Flexibility
MPEG 1.3 MB

2.3.1.2 非線形粘弾性要素

ヒトの筋肉はその活動レベルが高くなるにともない,筋肉の粘弾性係数も高くなる特性を有しています. その粘弾性特性を再現するために,Fig.19のモデルをたて非線形粘弾性要素を開発しました. なお,本機構にはセプトン(株式会社クラレ製)を使用し, セプトン自身が持っている粘弾性を利用してFig.20のような特性を有していることを確認しました.


Fig.19 Model of nonlinear viscoelastic module Fig.20 Viscoelastic characteristic

2.3.2 最適制御パラメータ自動探索

  柔軟アクチュエータに使用している超音波モータはPWM信号を入力することで駆動します. しかし,入力パラメータ(周波数,duty比)を変化させた際,出力が非線形的に変化する特性が確認されました. 柔軟アクチュエータに最大限の出力を発揮させようとした際,出力が最大になる最適パラメータを探索し,設定することが必要になります. また,製品間の入出力特性にもばらつきがあり,製品間で最適パラメータが異なることも確認されました. 柔軟アクチュエータを複数個アプリケーションに組み込んで使用する場合,1つの柔軟アクチュエータにつき2つの最適パラメータを 探索することが必要で,使用する柔軟アクチュエータの個数分だけ最適パラメータを探索しなければなりません. そのような多くのパラメータを手動で探索することはほぼ不可能なため,自動で最適パラメータを探索する最適パラメータ自動探索アルゴリズムを提案しています.   
 この自動探索アルゴリズムはGA(遺伝的アルゴリズム)を用いています.このアルゴリズムを柔軟アクチュエータに実装することにより,最適パラメータを探索することが可能であることを確認しました.



Fig.21 Flowchart


2.3.3 アプリケーション例の開発

われわれは柔軟アクチュエータの開発とともに,柔軟アクチュエータを組み込んだアプリケーションの開発も行っています. そのアプリケーション試作1号機としてヒトの舌モデルの開発を行いました. 開発した舌モデルの中に柔軟アクチュエータが4つ組み込まれていますが,アクチュエータ自身の柔軟性が高いためヒトの舌のような柔軟な動作が可能となっています. また,アプリケーション外部に大型の機械部品などを必要としないため系全体で小型化が可能であるというメリットもあります.



Fig.22 Tongue model


 

動作動画
Before tuning
MPEG 1.0 MB
After tuning
MPEG 1.2 MB


3. 謝辞

  プーリを提供して頂きましたNikki Fron(株),SMAを提供して頂いた古河テクノマテリアル(株)には感謝いたします. また,3DCADソフトウェアをご提供して頂いたソリッドワークス・ジャパン(株),に感謝いたします. また,研究に協力して頂いた(株)クラレ,大電(株),中興化成工業(株)に感謝いたします.

Nikki Fron株式会社
古河テクノマテリアル株式会社
ソリッドワークス・ジャパン株式会社
大電株式会社
株式会社クラレ 熱可塑性樹脂 セプトン
中興化成工業株式会社
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