新生児蘇生法 シミュレータ WAKABA-5

概要


日本において年間約13万人の新生児が出生時に何らかの蘇生措置を必要とします.しかし,専門医がいる病院以外の産科診療所や助産所でも出生することも多いため,新生児科医以外の産科医師や助産師,看護師など分娩に関わる全ての医療従事者に対しても新生児蘇生の訓練を行うことは重要です.そのため,日本周産期・新生児医学会が新生児蘇生法(NCPR)として新生児を蘇生する手順をまとめています.新生児蘇生法の訓練の場として講習会が開かれていますが,マネキンを用いるため,症例再現が不十分であることや臨場感不足,インストラクターが指導と状況説明を同時に行うことによる大きな負担が問題になっています.

それらの問題を解消するために,私たちは新生児蘇生法の症例再現と手技評価が可能なロボットシミュレータの開発を行っています.2020年度は新生児蘇生法のアルゴリズム中で新生児の状態を判断する指標となる筋緊張変化の再現が実現可能な新生児型ロボットシミュレータWAKABA-5(WAseda Kyotokagaku Airway BAby-No.5)を製作しました.

図1 WAKABA-5 外観

機体の内部構造


WAKABA-5はWAKABA-1~4と同様に健常な新生児の平均的体格を模擬しており,顔や手足には柔軟素材を用いてヒトに近い外見となっています.また,口から肺までの気道も柔軟素材を用いており,舌や喉頭蓋,食道への分岐なども再現されています.これらの柔軟部品は,共同研究を行なう株式会社京都科学が製作しました.

WAKABA-5はWAKABA-4に搭載された胸骨圧迫手技計測機構と呼吸動作再現機構に加えて筋緊張変化再現機構を搭載しています.筋緊張変化再現機構は1つのモータのみで筋緊張正常状態と筋緊張低下状態を切り替えることが可能で,直動動作を用いて肩部・肘部両方を動作することが可能です.この機構は筋緊張低下時には関節の可動範囲内で定まらない状態となり筋緊張正常時はW-M肢位をとります.

図2 WAKABA-5 内部構造

図3 筋緊張変化再現機構(肩部機構)

図4 筋緊張変化再現機構(肘部機構)


本研究は,国立成育医療研究センター新生児科にご協力頂いております.

動作


関連文献


海藏寺丘晴,武部康隆,小川駿也,桃井啓伍,菅宮友莉奈,足立智則,高西淳夫,石井裕之:"新生児蘇生法トレーニング・システムの開発―筋緊張変化を再現可能な新生児シミュレータの設計・製作―",第39回日本ロボット学会学術講演会予稿集,1B1-03,2021.