WL-16RIV概要

WL-16RIVは,脚機構にスチュワートプラットホーム型パラレルメカニズムを採用しており,パラレルメカニズムの高出力を生かし,人や物を乗せて歩行を行うことができます.基本構造および歩行制御方式はWL-16と同様ですので,こちらをご覧ください.

WL-16RIVの仕様は以下のようになっております.

▽寸法・重量
全高 [mm] 1431
重量 [kg] 60
総重量 [kg] 68
▽機構
リンク形式 スチュワートプラットフォーム
自由度 片脚6 × 両脚 = 12
▽アクチュエータ
原動機 DCサーボモータ
定格出力 [W] 150
▽コンピュータ・電装
CPU PentiumV 1.2[GHz]
バッテリ ニッケル水素バッテリ
リチウムイオンバッテリ
センサ類  ・ 6軸力覚センサ × 2
 ・ 3軸姿勢角センサ × 1
 ・ ロータリエンコーダ × 12
 ・ フォトマイクロセンサ × 12
▽性能
歩行周期 [s/step] 0.96
歩幅 [mm/step] 0〜300
可搬重量 [kg]  ・積載歩行   :80
 ・人間搭乗歩行:75

▲TOPへ戻る

耐久性の向上 ―新型足部ジョイントの開発―

1.研究目的

2005年度に開発された人間搭乗型2足歩行ロボットWL-16RIIIは人間が搭乗しての屋外歩行に成功してきており,実験室の限られた空間で実験をしてきたときと比べ,比較的長時間の歩行が求められるようになってきました.しかし,歩行時間が延びるにつれて,足部ジョイントのガタの増大および破損など,耐久性の問題が顕著に現れてきました.そこで,耐久性の向上として新型の足部ジョイントの開発を行いました.

2.新型足部ジョイント

従来の足部ジョイントのガタの原因として,摺動面に樹脂を使用していることが考えられます.歩行時には1800[N]という非常に大きな圧縮荷重がかかるため,それによって樹脂が変形しガタが発生してしまいました.そこで,今回新型の足部ジョイントとして,ヒーハイスト精工株式会社の新型球面転がり軸受を使用することにしました.これは,これまで市販されていた球面転がり軸受より遊星球の数が多くなっており,耐荷重が大きくなっています.また,転がり軸受であるため,非常に滑らかな動きを実現しています.

Fig.1 新型球面転がり軸受 概略図

Fig.2 新型足部ジョイント

3.評価実験

定量的に評価するために,疲労試験機を用いて評価実験を行いました.加える荷重は歩行時にかかっている荷重を参考にし,1800[N]の圧縮荷重と300[N]の引張荷重の繰り返し荷重としました.
 これにより,新型の足部ジョイントではガタが大きくならないことを実証することに成功しました.

Fig.3 ガタの大きさの比較

▲TOPへ戻る

可搬重量の向上 ―リンク配置の最適化と軽量化―

1.研究目的

これまでに開発してきたWL-16RIIIの可搬重量は約60[kg]であり,操縦装置付き搭乗者シートが10[kg]であることを考慮すると,搭乗可能な搭乗者の体重は最大約50[kg]と非常に限られていました.そこで,汎用移動モジュールとして実用に足る2足ロコモータの開発を目指し,可搬重量の向上を目的としました.

2.リンク配置の最適化

これまでの実験データより,歩行時において一部の直動アクチュエータに負荷が集中していることが原因となり可搬重量を著しく低減していたことがわかりました.また,この負荷の集中は前進や横移動といった歩行の内容によらず同じモータにほぼ等しく現れることから,脚部のパラレルメカニズムを構成するリンク配置の影響が大きいと考えられます.
 本研究では,まず歩行時にモータが出力するトルクをシミュレートできる逆動力学シミュレータを構築しました.そして,シミュレーション結果より得られる歩行時モータ電流の実効値の最大値を評価値として実数値GA (Real-coded Genetic Algorithm) によるリンク配置の最適化設計を行いました.これにより導出されたリンク配置はFig.4のようになりました.
 そして,このリンク配置を実現する骨盤および足部部品の設計を製作しました.新しいリンク配置では骨盤の底面積が大きくなってしまいましたが,リブの入れ方を工夫することによってこれまでと同等の質量で,たわみは小さいという解析結果が得られました.

骨盤側ジョイント

足部側ジョイント

Fig.4 リンク配置の比較

3.軽量化

 リンク配置の変更に伴い,ロボットの軽量化を図りました.しかし,ロボットを構成する部品はすでに軽量化を考えて設計してありますので,あまり大きな効果は期待できません.そこで,配線を整理することによって計量化を図ることにしました.
 まず,各所の電流値を実測することにより適切な許容電流のケーブルを選定しました.そして,通常のケーブルより大電流を流すことができるケーブルを使用することによって2.24[kg]の軽量化に成功しました.また,各所にマグネシウム合金を使用することにより軽量化を図りました.これ以外にも昨年度自重が増加した最大の原因である操縦装置も軽量化して,これらを全て合わせるとロボットの自重は約8[kg]減少しました.

Fig.5 配線の整理

Fig.6 ロボット各所の軽量化

4.評価実験

まず,リンク配置の変更のみの効果を調べるために,新しいリンク配置の骨盤と足部部品のみ交換して評価実験を行いました.そのときの電流実効値の比較をFig.7に示します.これを見ると,電流実効値の最大値が15[%]程度減少していることが分かります.これは,ロボットシステム全体の15[%],すなわち18[kg]程度可搬重量は増加したことになります.

足踏み
(歩行周期:0.99[s/step])

前進
(歩幅:200[mm] 歩行周期:0.99[s/step])

Fig.7 リンク配置変更による電流実効値の比較


 ロボットの軽量化によって可搬重量は8kg増加し,リンク配置の変更によって可搬重量は18[kg]程度増加しました.よって,WL-16RIVの可搬重量は26[kg]増加したことになります.これにより,重りの積載歩行では80[kg]まで,人間搭乗歩行においては搭乗者シートの重さを引いた75[kg]の人間まで搭乗可能となりました.




ペイロード:80 [kg]
歩幅:200[mm],歩行周期:0.96[s/step]


人間搭乗歩行


搭乗者:75 [kg]
歩幅:200[mm],歩行周期:0.96[s/step]


▲TOPへ戻る

デモンストレーション


NextFest デモンストレーション




▲TOPへ戻る