2足ロコモータ班

WL-16R
(Waseda-Leg No.16 Refined)

WL-16R



■ 脚部機構

WL-16Rの脚部には,スチュワート・プラットフォームと呼ばれる6自由度パラレルメカニズムを採用しています. WL-16Rの基本構造は,WL-16から構成されていますのでこちらをご参照ください.


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■ 歩行制御

WL-16Rの歩行制御には,私たちが1987に基本理論を発表し,これまで研究を発展させてきた, 「ZMP安定判別規範に基づくモーメント補償軌道算出アルゴリズム」という 2足歩行制御方式を用いています.
(ZMPについてはこちらをご参照ください.)


歩行パターン作成時には,ロボットに乗っている人の重心位置や慣性モーメントなどの 力学的パラメータが必要です.しかし人間の力学的パラメータの測定は非常に難しく, また人間がロボットの上で少しでも動くと変わってしまうため, 事前にそのパラメータを得るのは困難です. そこで,WL-16Rでは乗っている人が多少動いても,また路面の傾斜や凸凹が分からなくても安定した歩行を継 続できるような制御が必要だと考えまして,次のような安定化制御を実装しています.1つ目に仮想コンプライ アンス制御という制御法を用い,足部にやわらかさを持たせることによって,積載物の力学モデル誤差や 路 面の凹凸などが多少あった場合にも安定した歩行を実現します.2つ目にZMP補償制御という制御法を用い,外乱のために生じるZMPの変化を補償することによって, ロボットに不意の外力が加わった場合にも安定した歩行を実現します.3つ目に姿勢制御を用い,ロボット腰部の位置と姿勢角を補償 することで未知の傾斜面においても継続的な足踏み運動や前方向への歩行を実現します.

制御システム


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■ 仕様

WL-16Rの仕様は以下の表に示す通りです.

外形寸法
外形寸法


WL-16

正面 右側面
(a)正面 (b)右側面
背面 左側面
(c)背面 (d)左側面

※写真をクリックすると別ウィンドウが開きます



▽寸法・重量
全高 [mm] 1160〜1500
重量 [kg] 55
総重量 [kg] 62
▽機構
リンク形式 スチュワートプラットフォーム
自由度 片脚6 × 両脚 = 12
▽アクチュエータ
原動機 DCサーボモータ
定格出力 [W] 150
▽コンピュータ・電装
CPU PentiumV 1GHz
バッテリ ニッケル水素電池
センサ類  ・ 6軸力覚センサ × 2
 ・ 3軸姿勢角センサ × 1
 ・ ロータリエンコーダ × 12
 ・ フォトマイクロセンサ × 12
▽性能
歩行周期 [s/step] 0.96〜1.92
歩幅 [mm/step] 0〜300
積載可能重量 [kg] 0〜60
自重支持トルク低減機構実装時:0〜94
駆動時間 [min] 67
自重支持トルク低減機構実装時:81

※太字部分がWL-16Rの追加仕様となり,それ以外はWL-16と同仕様です.
なお,WL-16の仕様は
こちらから.


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■ 自重支持トルク低減機構

WL-16の成果より60kgの人間を搭乗させた場合の2足動歩行には成功いたしました. しかしながら60kgを超える人間は多く,さらに100kgを超えるロボットも少なくありませんので十分な積載能力とは言えません. また最長駆動時間は67分であり,こちらも十分ではありません.

そこで私たちは可搬重量の増加と消費電力の低減をめざし,WL-16Rのアタッチメントとして「自重支持トルク低減機構」を考案しました.

「自重支持トルク低減機構」とは,バネ要素を利用し,ロボットの自重の鉛直成分を補助的に支持することで,アクチュエータ にかかるトルクを低減させることを目的としています.直列に配置された2本のロック機能付ガススプリングで構成されており,歩行の立脚・遊 脚に対応してバネの効果を切替える機構を持っています.ここで「立脚・遊脚に対応する」とは,立脚時にはバネが自重を支持する役割を果たし, 遊脚時にはバネの影響を受けずにアクチュエータに負担のない足部動作が実現できる, ということを意味しています. weight springmodel


自重支持トルク低減機構の仕様は以下に示す通りです.

自重支持トルク低減機構

自重支持トルク低減機構

▽自重支持トルク低減機構の仕様
全長 [mm] 自由長 815
最大圧縮時 465
重量 [kg] 2.6
ガススプリング反力 [N] 立脚用 Max. 456
Min. 392
遊脚用 Max. 229
Min. 196


自重支持トルク低減機構を実装したWL-16Rはこちらのようになります.

STRM_isometric STRM
正面 右側面 左側面 背面
(a) 正面 (b) 右側面 (c) 左側面 (d) 背面

※写真をクリックすると別ウィンドウが開きます


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■ 歩行実験映像

WL-16はこれまでに,以下のような歩行に成功しています.

(a) 凹凸路面での足踏み動作


厚さ12[mm]の板を片足の下に配置した不整路面での歩行実験の映像です.
◇ 歩行周期:0.96[s/step]

(b) 外力を付加した場合での足踏み動作


10[kgf]の力で前方向にロボットを引張った場合での歩行実験の映像です.
◇ 歩行周期:0.96[s/step]

(c) 傾斜面での足踏み動作


8[deg]の角度をもつ傾斜面での歩行実験の映像です.
◇ 歩行周期:0.96[s/step]

(d) 平坦路から傾斜面への歩行動作


平坦面から3[deg]の角度をもつ傾斜面への歩行の映像です.
◇ 歩行周期:0.96[s/step],歩幅100[mm/step]

(e) 80kg積載歩行


自重支持トルク低減機構を取り付けることにより,80kgのおもりを乗せた状態での歩行に成功しました.
◇ 歩行周期:0.96[s/step],歩幅100:[mm/step]

(f) 成人男性を乗せての2足動歩行


自重支持トルク低減機構を取り付けることにより,94kgの成人男性を乗せての2足動歩行に成功しました.
◇ 歩行周期:0.96[s/step],歩幅100:[mm/step]



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■ 今後の展望

私たちの旅はまだ終わりません 今後は,より速い速度での歩行,階段の昇降,不整地歩行制御, 搭乗する人間の力学モデルや運動の影響をフィードバックするインテリジェントな積載歩行制御法の構築なども含め, さらに実用に足る汎用2足移動モジュールの開発を進めてゆきます.

真に実用的な2足歩行ロボットの開発を目指す私たちの旅は,まだ終わりません.


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