咀嚼解析

実験1

背景: 顎運動の機能解析のために様々な顎の追従装置が開発されてきましたが,大抵は持ち運びに不便でした.顎運動解析装置の扱いやすさを改善するために,われわれはWB-3 IMUを使用して,顎の動作を追跡することを試みました. IMUは実験中,対象への物理的な制限なしに顎に取り付けることができました.3つの形状と硬さが異なる食物を用いて,それらを咀嚼している顎の運動解析を行いました.実験対象者は 21から36歳までの9人の健常者で,咀嚼時間と咀嚼回数,咀嚼の際の速度と加速度のPower Spectrum Density(PSD)を計測しました.その結果, 柔らかい食物の場合,咀嚼時間は短く,咀嚼回数は少なく,咀嚼の強さも小さいことがわかりました.逆に固い食物ほどそれらの値は大きくなりました. そして,これらの3個の食物を食べている間,開口角度の違いはありませんでした.

目的: われわれの目的は,WB-3システムを使用して,既存の装置の問題点を改善して,顎の運動解析装置の利便性を改良するために評価方法論を開発することです.

Fig. 7 Mastication experimental setup with WB-3

Fig. 1 Mastication experimental setup with WB-3

結果: 咀嚼時間と咀嚼回数,顎の角速度と角加速度のパワースペクトル密度,顎加速度の累積分布関数,そして口の開き具合のパラメータを示すことができます. 実験の結果,柔らかい食物を食べた場合は,咀嚼時間や咀嚼回数,加速累積分布,エネルギーが小さいことを示しています. 逆に,硬い食物ではそれらの値が大きいことがわかります.そして,これらの3つの食物を咀嚼している間の口の開き具合に大きな違いはありませんでした.われわれの顎運動の解析に試験的にIMUを使用することは,歯の治療のための支援システムとして臨床的に使用される可能性がある顎動作やパターンの解析に向けた有効なものであると考えられます.

実験2

背景: 診断や治療,治療などの分野で近年,咀嚼解析が利用されています.咀嚼解析の目的は,顎の筋骨格系障害を診断するための客観的な情報の提供と治療法の進歩を支援することです.そのため,顎運動の定量的な計測や解析のための装置の開発は,医療現場において注目されつつあります.顎運動の機能解析のために様々な顎の追従装置が開発されてきましたが,大抵は持ち運びに不便なものでした.顎運動解析装置の扱いやすさを改善するために,われわれはWB-4を使用して,顎の動作を追跡することを試みました.

目的・方法: われわれの目的は,WB-4システムを使用して,既存の装置の問題点を改善して,顎の運動解析装置の利便性を改良するために評価方法論を開発することです.
 WB-4を1つは被験者の顎運動を計測するために下顎に装着し,もう1つは咀嚼時の額の運動を計測するためにベルトで固定しました(Fig. 2).また,咀嚼には20x12x6.0[mm] ,重量1.4[g]の粒のガムを使用した.
 実験は3種類の方法で行いました.(1)ガムを自然に咀嚼してもらう(2)ガムを右側のみで咀嚼してもらう(3)ガムを左側のみで咀嚼してもらう.各被験者には(1)から(3)の順で実験を行ってもらい,咀嚼時間は全て60[s]として,それぞれ5回ずつ計15回行いました.

Fig. 7 WB-4 set position

Fig. 2 WB-4 set position

結果: 実験結果から,下顎の角速度や右側のみの咀嚼と左側のみの咀嚼のPSD値などのパラメータを得られ,被験者9名から3種類の咀嚼パターンに分類することができました.これらの結果と評価は,さらに被験者を増やして検証することで,より信頼性の高いものとなると考えられます.

References

Last Update: 2016-11-01
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