近年,医療手術手技を向上させるための手法に関して研究開発が盛んに行われています.その一つとして,医療分野にロボット技術を導入することで既存の臨床手順を改良し,現在の臨床における問題解決を試みるという革新的なアプローチがあります.この研究によって,臨床や外科などの現場において人間を工学的な側面から理解することができ,医療手術手技において熟練者と初心者で何が違うのかだけでなく,どうして違うのかということも解明できると考えられています.
そのようなロボット技術の中でも,人間の動作を分析するために効果的な手法がモーションキャプチャです.モーションキャプチャを使用することにより人間の動作を数値データとして取得することが可能であり,さらに人間の関節運動を追跡してそれらをデジタルモデルに置換し,人間の動作を詳細に解析することも可能です.このモーションキャプチャに使用される技術としてカメラ,磁気センサ,慣性センサが一般的です.これらの技術には以下のような問題点があります.
1) カメラベースのシステムは非常に高価であり,かつ計測範囲がカメラが設置されている空間に限られてしまいます.
2)磁気センサは周囲の磁場の乱れによって精度に問題が生じやすいため,比較的低周波数での計測では解析精度が制限されてしまいます.
3)既存の慣性センサは,そのサイズは人の指に設置するには大きいため,医療手術における指先の動作などの細かな動作解析を必要とする計測対象には適さないという問題があります.
これらの問題点から,現在のシステムはいずれもMinimally Invasive Surgery(MIS),歩行分析,リハビリテーションなどのあらゆるモーションキャプチャに適したものではないと言えます.