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WATHLETE-1
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Fig. 1 WABIAN-2R |
本研究室では2足ヒューマノイドロボットWABIAN-2R(Fig. 1)を開発し,骨盤を用いた膝関節伸展歩行などの人間の歩行運動を模擬してきました.しかしWABIAN-2Rは跳躍運動や走行運動といった,各関節に大きな出力が必要とされる運動が実現可能なようには設計されておりません.また,これまでの関連研究で,人間の走行運動の特徴を十分に模擬できているロボットは見当たりません. |
Fig. 2 人間の矢状面の特徴 |
Fig. 3 人間の前額面の特徴 |
Fig. 4 人間の投球の特徴 [G. Fleisig, 1999] |
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Fig. 5 WATHLETE-1 (2016) |
Fig. 6 自由度配置図(WATHLETE-1) |
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Fig. 7 投球ロボット (2025) |
Fig. 8 自由度配置図(投球ロボット) |
Fig. 9 システム構成図 |
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投球ロボット |
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■ フォークボール投球時の指モデルに基づく変化球投球可能な手部機構の開発 |
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本研究プロジェクトでは,人間のダイナミックな運動として投球動作に着目し,人間の特徴をロボットに取り入れることで,
高効率な投球ヒューマノイドロボットを作成することを目標としています.これまでに肩の移動を再現する実験装置,人間の投球時の
弾性を模擬した肩・肩甲骨機構,慣性による脱力動作を行う肘部機構,弾性力・慣性力を発揮できる前腕・手首機構,ストレートが投球できる軽量な手部機構を開発してきました.しかし,手部機構は 58[%]質量超過し ていることや,ストレート以外の投球ができないという課題がありました.そこで,本研究では変化球(フォークボール)の投球が可能な軽量手部機構の開発を目指しました.
フォークボールは,回転数がストレートと比べておよそ半分であり,バッターの手前で急激に落ちるような軌道を描く球種です.フォークボールの特徴として示指・中指でボールを挟んで投球することが挙げられます.その特徴から示指・中指の内外転動作が必要であるため,フォークボールのボールリリース時におけるボールの回転付与モデルを考案し,内外転の握る力と内外転の角度を算出しました. 機構設計について,示指・中指は内外転動作と PIP 関節の屈曲・伸展動作に分けられます.特に内外転動作は算出した要求仕様に基づき,ギア機構により, 1 つのモータから 2 つの指へ動力を伝達して動作します.PIP 関節の屈曲・伸展動作は現行のワイヤ固定・解除機構の固定方法をヒンジの開閉によるものからラチェットによる 巻き取りに変更しました.母指はフォークボールの投球中は寄与が小さいことから,その動作を固定することで,大幅な軽量化につながりました. 実験では,現行の手部機構との投球結果を比較しました.その結果,現行の手部機構によるストレートは,平均球速 36[km/h],平均回転数 425[rpm],開発した手部機構に よるフォークボールは平均球速 33[km/h],平均回転数 209[rpm]となり,フォークボールの回転数がストレートに対して半減していることが確認できました.また,開発した機構は現行の機体から 約 21%軽量化することができました. |
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Fig. 10 内外転動作のギア機構 |
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Fig. 11 手部機構の全体図 |
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Fig. 12 製作機体および自由度配置図 |
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[関連論文] ・ 公納正剛他,"人間の特徴に着目した投球ヒューマノイドロボットの開発(第 9 報:フォークボール投球時の指モデルに基づく変化球投球可能な手部機構),第 43 回日本ロボット学会学術講演会予稿集,1D5-05,東京都,2025 年 9 月. |
■ 弾性力の利用による高効率な投球が可能な体幹機構の開発 |
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本研究プロジェクトでは,人間の運動技術の工学的な解明を目的として,人間の運動時の特徴を取り入れることにより,アクチュエータの出力に対して,高いパフォーマンスを実現するヒューマノイドロボットの開発を行っています.これまでの研究では,手部・腕部・肩部および体幹部から構成されるロボット開発しました.ロボットには人間の肩関節や肩甲骨における弾性を取り入れることで,人間の投球動作における腕の運動を再現し,約30[km/h]の投球速度において効率的な動作を実現しました.しかしながら、100[km/h]を超えるような投球動作の再現には至っていません.その要因として,これまでの体幹部が肩位置移動の再現を目的として設計されていることが挙げられます.この体幹機構は質量が要求を大幅に超過しており,投球時の人間の出力を発揮できないという問題がありました.そこで本研究では,弾性機構により高効率な投球が可能で人間と同等の質量とリンク長を有するヒューマノイドロボットの体幹機構の開発を目指しました.
本研究において「体幹」とは,人間の全身から頭部・腕部・脚部を除いた胴体全体を指し,肋骨の下端で上胴および下胴の2つに分けて構成されます(Fig. 13).人間の投球動作において,それに加えて下肢の回転エネルギーを腕部へと伝達する役割を担うだけでなく,体幹部が手部や腕部に比べて大きなエネルギーを発生させています.特に,体幹捻転運動による弾性力を使用し,回転を増幅させています.投球時の体幹の動作の特徴をFig. 13に示します.Fig. 13の⓪の投げ始めの状態から@にかけて,まず下胴が上胴に対して先行して回転し,上胴と腕が慣性力によって取り残されます.その際に下胴と上胴が捻られ,体幹Yaw軸に弾性エネルギーが蓄積されます.次に,Aでは上胴が弾性エネルギーを開放しながら下胴と同じ投球方向に回転することで,高速に回転します.そしてその勢いを利用してBのようにボールをリリースします.このように,弾性エネルギーを利用することで人間は高速な投球を実現しています. 人間の投球時における体幹の弾性率は球速131[km/h] の時に,約714[Nm/rad]であり,人間の上胴部の質量は16[kg]であることから,これらを要求として体幹機構を設計しました.開発した体幹機構のCAD図と外観をFig. 14に示します.また,投球ロボット全体の自由度配置図とCAD図をFig. 15に示します.弾性機構は腰部に搭載され,体幹捻転運動を再現します.また,設計された上胴部の質量は約43%の軽量化を実現し,15.9[kg]と,要求を満たしました. 開発した機構の有用性を評価するため,ヒューマノイドロボットによる硬式球の投球実験を実施しました.評価実験では,弾性機構のばねを利用することで,ばね非使用時と比較して体幹のYaw軸における消費エネルギーが14%低減されました.これにより,体幹捻転運動を模擬した弾性機構の有効性が確認されました.さらに,弾性機構の導入および構造の軽量化により,約40[km/h]のストレート投球に成功しました.この結果から,体幹捻転運動を模擬する弾性機構を備えることにより,体幹機構の効率を向上させることができることが確認できました. |
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Fig. 13 投球時の体幹捻転運動 |
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Fig. 14 体幹機構 |
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Fig. 15 投球ロボット自由度配置図・投球ロボット全体図 |
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[関連論文] ・ 福田大朗他,” 人間の特徴に着目した投球ヒューマノイドロボットの開発(第8報:弾性力の利用による高効率な投球が可能なヒューマノイド体幹機構の開発)”,第43回日本ロボット学会学術講演会予稿集,RSJ2025AC1D5-04,東京都,2025年9月. |
■ 弾性力・慣性力を利用する前腕・手首機構の開発 |
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投球ロボットのプロジェクトでは,人間のダイナミックな運動のうち,
投球動作に着目して人間の身体構造や機能に着目した投球ヒューマノイドロボットを作成することを最終目標としています.
これまでに人間の投球時の弾性を再現した肩部および肩甲骨部,脱力を再現した軽量な肘部,
人間同等な出力が発揮可能な前腕部,劣駆動による指部機構,
および体幹の動作を再現した体幹装置を開発してきました.
この研究では,人間と同程度の質量特性を持ち, 人間と同等の出力発揮および弾性力・慣性力を利用することが可能な前腕・手首機構の開発を目指しました. これは以前開発した前腕・手首部が人間の投球動作の特徴である弾性力の利用や脱力を行えないこと, そして質量が成人の前腕部の平均質量に対して重く, 肩などへの負担が大きくなり高速な投球ができないことが課題だったためです. 手首の動きを掌屈/背屈,撓屈/尺屈,回内/回外の3軸としたときの投球動作のデータから, 掌屈/背屈運動は投球直前で脱力を,撓屈/尺屈運動は弾性力を利用していることが示されました. 機構としては,掌屈/背屈運動は電磁石を利用した固定・脱力動作,撓屈/尺屈運動はばねをモータと並列に配置し, 投球速度の向上およびエネルギーの高効率化を図りました.また大型な前腕のフレームを, 機械要素を外側に搭載し内骨格化することで約65%の重量削減につながりました. 実験では,脱力を用いた投球動作により投球速度が約11%向上し, ばねを用いた投球動作により該当部のモータ消費電力が約9%低減されました. |
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Fig. 16 手首掌屈/背屈軸脱力機構 |
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Fig. 17 製作機体および自由度構成図 |
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[関連論文] ・ 三島大樹他,"人間の特徴に着目した投球ヒューマノイドロボットの開発(第7報:弾性力・慣性力利用を模擬する投球ロボットの前腕・手首部機構),第42回日本ロボット学会学術講演会予稿集,2A1-02,大阪府,2024年9月. |
■ ストレート投球時の指モデルに基づく高速投球可能な軽量手部動作機構の開発 |
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本研究プロジェクトでは,全身を協調させるダイナミックな動作である投球動作に着目し,
人間の特徴を取り入れることによる,軽量・高効率な投球ヒューマノイドロボットの開発を目標としています.
これまでに肩位置の移動を再現する実験装置,弾性を備えた肩・肩甲骨機構,脱力が可能な肘部機構,
人間と同等の出力発揮が可能な前腕・手部機構を開発してきました.
しかし,前腕・手部機構は出力要求を満たす設計の結果,要求質量を大幅に超過しており,
高速投球の実現の妨げとなっていました.そこで本研究では,軽量で高速投球が可能な手部動作機構の開発を目指しました.
人間の投球時,ボールリリースの前に,指で把持されたボールから母指が離れ, ボールは示指・中指の指先方向に転がり始めスピンがかかります. つまり,人間の投球時の手の役割は把持とスピン付与の大きく二つに分けることができ, その切り替わりは母指の開きによって生じます. また,人間のストレート投球時の中指の特徴として,リリース時に, 拮抗筋同士を収縮させる共収縮によりPIP関節などの剛性を高めていることが示唆されています. さらに,ストレート投球時の示指と中指のリリースタイミングはほぼ同時で, PIP関節は同様の角度変化を示すことが確認されています. そこで,最も一般的な球種であるストレートを対象として示指・中指機構および母指機構を設計し, 特に示指・中指をPIP関節の動きに着目してモータレスとすることで,軽量化を図りました. 示指・中指について,把持時は,ワイヤと電磁石を用いた示指・中指PIP関節角度固定・解除機構により, 一端を中節骨リンクに固定したワイヤのもう一端をヒンジで挟み電磁石を吸着し位置を固定することで, PIP関節が伸展しないようにします. 把持からスピン付与へ切り替わる際に電磁石を釈放することでワイヤ張力によりヒンジが開き固定が解除されます. スピン付与時は,示指・中指PIP関節弾性機構により,PIP関節に弾性が付与されます. 剛性値を求めるためにPIP関節に弾性を付与した際のストレート投球時のスピン付与時の指モデルを作成しました. 球速107[km/h]の人間の投球時のデータを参考に, ボールリリース時のPIP関節の角度が170〜180[deg]となる剛性値を調査したところ, 示指・中指それぞれのPIP関節の剛性値の要求は3[Nm/rad]となりました. 母指機構にはトーションばねを内蔵し,連続的な把持トルクを発揮することでモータの要求を低減し, 軽量化を図りました.これらの改良により, 手部動作機構の主な機械要素の合計質量は1130[g]から300[g]へと大幅な軽量化を達成しました. 機構の有用性を評価するために投球ヒューマノイドロボットで硬式球の投球実験を行いました. ロボットの動作速度に合わせて示指・中指のPIP関節の剛性値はそれぞれ 0.8[Nm/rad]としました. 実験では,人間の投球を模擬したロボットによる硬式球の投球の研究では最高球速であると考えられる, 約35[km/h],約 450[rpm]でストレートの投球に成功し,人間の投球時の手の役割と動きが再現されていることが確認できました. ロボットの中指のPIP関節の角度の時間変化のリリースにかけての傾向は人間の投球時のデータと類似しており, PIP関節に弾性を付与するモデルの妥当性を支持する結果となりました. また,母指の掌側外転のタイミングを変化させることで投球方向を変化させられることが確認できました. |
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Fig. 18 角度固定・解除機構動作図 |
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Fig. 19 弾性機構動作図 |
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Fig. 20 開発した手部機構 |
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Fig. 21 製作機体および自由度構成図 |
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[関連論文] ・ 青木陸他,"人間の特徴に着目した投球ヒューマノイドロボットの開発(第6報:ストレート投球時の指モデルに基づく高速投球可能な軽量手部機構の開発),第42回日本ロボット学会学術講演会予稿集,2A1-01,大阪府,2024年9月. |
■ 弾性を備えた肩・肩甲骨関節機構の開発 |
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投球ロボットの研究では,人間のダイナミックな運動のうち,
投球動作に着目して人間の身体構造や機能に着目した投球ヒューマノイドロボットを作成することを最終目標としています.
これまでに人間の投球時の弾性を再現した肩部,脱力を再現した軽量な肘部,人間同等な出力が発揮可能な前腕部,
劣駆動による指部機構,および体幹の動作を再現した体幹装置を開発してきました.
この研究では人間の投球時,肩甲骨の柔らかさが実際の投球において重要であるというスポーツ科学の知見に着目し, 肩甲骨から肩の移動を起こす肩甲帯動作を再現する機構の開発を目指しました. 肩投球の振りかぶり期には体幹の回転によって肩が後方に下がり, 肩甲骨周辺の筋肉に弾性エネルギーを蓄積させそこから肩を前方へ送り出します. この特徴をロボットに取り入れるために肩甲骨関節として弾性を取り入れた肩甲骨関節機構を新たに作成し, 投球能力の向上を目指しました. しかし,肩甲骨は内転/外転,上方回旋/下方回旋,挙上/下制の動作が存在し,それらが屈曲/伸展動作, 挙上/下制動作の肩甲帯動作と,肩関節の内外転に連動した動作を行います. それらの要素が複雑に動作に関わっています.そこでロボットの投球能力の向上に焦点を絞り, 投球時の肩甲骨周辺において寄与の大きい筋である前鋸筋が肩甲骨の水平動作に関わる動作であることから, まずyaw軸方向の駆動軸を実装しました. 肩甲骨軸がエネルギーを溜めるばねを並列として実装することでアクチュエータへのトルクを軽減し実際のロボットの性能の向上を図りました. 実験では体幹の回転の代わりに肩甲骨軸自体を回転させた実験を行い, 弾性を溜めた後の肩の前方への送り出しにおける出力がばね非搭載時に対して48%低減されることが確認されました. |
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Fig. 22 開発した肩甲骨機構 |
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Fig. 23 製作機体および自由度構成図 |
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[関連論文] ・ 岩本真輝他,"人間の特徴に着目した投球ヒューマノイドロボットの開発(第5報:弾性を備えた投球ロボットの肩・肩甲骨機構の開発),第41回日本ロボット学会学術講演会予稿集,3I2-01,宮城県,2023年9月. |
■ 投球時の脱力動作を模擬する軽量肘部機構の開発 |
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この研究では,ダイナミックな人間の運動として投球動作に着目し,
人間の投球動作を模擬するヒューマノイドロボットの開発を目標としています.
これまでに人間のような弾性を有する肩部および能動・脱力の切替が可能な肘部,劣駆動指を供えた手部からなる右腕部および投球時に体幹などの運動により起きる肩の移動を再現する実験装置が開発されました.
本研究では,人間と同程度に軽量で能動・脱力の切替が可能な肘部機構の開発を目指しました.
従来の機構では,人間における筋肉による屈曲伸展をモータの能動駆動により模擬し,ボールリリース付近の高角速度での肘の伸展時には,高トルクを伝達可能なツースクラッチを用いてモータからの動力を遮断し,慣性力によって前腕を高速回転させます. この機構の問題点は,腕部の要求質量2.5[kg]に対しツースクラッチが400[g]と腕部の機械要素の中で最も重いことです. そのため,肘の要求仕様は人間の動作計測データから,脱力動作時の肘関節トルクを10[Nm], モータによる能動動作から脱力動作への切替が可能であること, 脱力状態で肘を伸展方向に高速回転可能であること, そして投球動作の中で肘の伸展が行われる時間はおよそ41[ms]であることから,切替時間がこれを下回ることとし,新たな軽量肘部機構を開発しました. 能動動作と脱力動作の切替を実現する軽量な機構として,機械的な接続を引き抜く方式としました. 肘軸から伸びたビームを前腕フレームとソレノイドの先端についたベアリングで挟むことで固定し,モータから肘軸へ,肘軸から前腕フレームへとモータからの動力の伝達を可能にしています. 固定の向きと垂直な方向に駆動するソレノイドで前腕とビームの固定を解除することによってモータからの動力伝達を遮断し,脱力動作への切替を可能にしました. これにより動力伝達時にかかる反力の分力は直動機構の駆動方向に発生せずアクチュエータの出力要求を下げることが可能になりました. また反力はソレノイドの駆動方向を支えるガイドレールで受け持つことで大トルク伝達が可能になりました. そして,ソレノイドのストロークの長さが脱力動作時の隙間長さに影響し,その長さは約1.5[mm]となりました. これらの改良により,従来の切替に用いたツースクラッチと,本研究のソレノイドによる切替機構の重さを比べると400[g]から206[g]へと大幅な軽量化を実現しました. |
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Fig. 24 開発した肘機構 |
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Fig. 25 製作機体および自由度構成図 |
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[関連論文] ・ 中澤由理他,"人間の特徴に着目した投球ヒューマノイドロボットの開発(第3報:投球時の脱力動作を模擬する軽量肘部機構およびボールに回転を加える投球が可能な指部機構の開発),第40回日本ロボット学会学術講演会予稿集,1E1-03,東京都,2022年9月. |
■ 人間と同等の出力発揮が可能な前腕部および手部機構の開発 |
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この研究では,ダイナミックな人間の運動として投球動作に着目し,
人間の投球動作を模擬するヒューマノイドロボットの開発を目標としています.
既に肩関節および肘関節を持つ上腕部および肩位置の移動を再現する実験装置が開発されているため,
手首関節および指関節を持つ前腕部及び手部機構の開発を目指しました.
先行研究から人間の投球動作では,次のような特徴を持つことが分かっています. まず体幹や腕の運動により手部はボールを把持しながら,高速移動します. さらに前腕と手首の回転運動は手部を回転,加速させ,最後にボールを指で押し出し,投球の回転,球速,精度を決定します. これらの人間の投球動作における特徴を実現しつつ,人間と同等の重量,サイズ,解剖学に基づく可動角を持たせ, さらに球速100[km/h]の投球動作を参考に,出力要求をトルクは手首Roll, Pitch, Yaw軸で各々9.0[Nm],3.0[Nm],5.0[Nm],角速度は3軸とも2400[deg/s]として, これらの角速度とトルクを同時に発揮できることを要求としました. また指関節への出力要求は,指先での最大発揮力150[N]および角速度3500[deg/s]としました. これらの要求仕様を満たすために,次のような機構を考案しました. まず減速機には手首・指ともに要求する出力を発揮できるようウォームギヤを採用しました. また軽量化および人間の指の駆動法を模擬するため,指を駆動するモータは投球に必要な示指,中指,母指に各1つとし, 各指について掌側に配置したワイヤで全関節を連動して屈曲させ,伸展にはバネを用いる片拮抗駆動を持つ機構を採用しました. さらに小型化,質量の分散のために手首Yaw軸モータや母指のモータおよびウォームギヤを体幹部に配置し,動力伝達にフレキシブルシャフトおよび ワイヤとアウターチューブを用いる機構を採用しました. 以上を踏まえ前腕部及び手部の機構を設計しました.機構の有用性を評価する為にボールの把持実験を行いました. 実験からワイヤおよびバネを用いた片拮抗駆動が有効であること,設計した機構によるボール把持が機能していることが確認できました. |
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Fig. 26 片拮抗駆動により屈曲・伸展する指関節の機構 |
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Fig. 27 手首関節の機構 |
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Fig. 28 製作した機体および自由度構成図 |
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[関連論文] ・ 宮澤啓吾他,"人間の特徴に着目した投球ヒューマノイドロボットの開発(第2報:人間と同等の出力発揮が可能な前腕部および手部機構の開発),第39回日本ロボット学会学術講演会予稿集,3C1-04,オンライン開催,2021年9月. |
■ 弾性力と慣性力を利用した投球が可能な投球腕部機構の開発 |
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これまで本研究においては,人間のダイナミックな運動を模擬するヒューマノイドロボットとして走行運動に注目して開発を行ってきました.
この研究では,走行以外のダイナミックな人間の運動として投球動作に着目し,
人間の投球動作を模擬するヒューマノイドロボットの開発を目標としています.
先行研究により,人間の投球時の肩や肘の動作に関する身体的特徴について,次のことが分かっています. 1.筋肉や腱が持つ弾性を利用することで,投球中の肩の内外旋動作において弾性エネルギーの蓄積と解放を投球動作中に行っている. 2.投球中に前腕にかかる慣性を利用することで,肘関節を伸展させる筋肉に頼らずに肘を伸展させて前腕を加速させている. 上記の2点の人間の特徴を機構として取り入れたヒューマノイドロボットの腕部を開発するために人間の投球動作を人体計測した先行研究を調査しました. 得たデータを解析した結果,人間の肩の外旋角が一定の角度を超えるとトルクと角度が線形の関係を持つことが分かりました. その傾きから,肩関節の弾性値の要求仕様を70[Nm/rad]と定めました. また,ボールリリース直前の肘伸展時において,角速度変化の大きさに対して発揮トルクが小さいことが分かりました. その時点のトルクから,肘関節の発揮トルクの要求仕様を10[Nm]以下と定めました. これらの要求仕様を満たすために,次のような機構を考案しました. 肩の内外旋の動作を行う機構には,モータ駆動による能動動作とバネを利用した弾性動作を関節角度に応じて切り替えるために,CFRP製の板ばねを利用した機構を考案しました. 慣性力を利用する肘の機構に関しては,モータからの動力伝達を任意に遮断するためにクラッチを使用した機構を考案しました. 以上のことを考慮して腕部の機構を設計しました.また,開発した腕を評価するためには腕に慣性力を発生させる必要があり, 投球時の体幹部の動きを再現するための実験装置も設計しました.機構の有用性を評価する為に動力学シミュレータ上で検証を行ったところ, 弾性力や慣性力を利用した機構を搭載することで,アクチュエータへの負荷が軽減されたことを確認できました. |
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Fig. 29 肩内外旋動作を行う機構 |
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Fig. 30 肘関節の機構 |
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Fig. 31 設計した機体(実験装置含む) |
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[関連論文] ・ 渡部竜也他,"人間の特徴に着目した投球ヒューマノイドロボットの開発(第1報:弾性力と慣性力を利用した投球が可能な投球腕部機構の開発),第38回日本ロボット学会学術講演会予稿集,2H3-04,オンライン開催,2020年10月. |
走行ロボット |
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■ 関節に剛性可変機構をもつ2足走行ロボットのため剛性楕円計算による脚剛性制御システムの開発 |
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これまでの研究で,人間の跳躍・走行運動を模擬するため,人間の力学的特性を再現した走行ロボットの開発を行ってきました.人間の走行運動では,脚全体が直動ばね,各関節が回転ばねのように振る舞い,それらの剛性は走行速度に応じて変化することが分かっています.これまでの研究で開発されてきたロボットはこの特徴を模擬し,膝関節および足関節に剛性可変機構を搭載しており,関節剛性を変更することが可能です.しかしながら,脚全体の剛性と各関節の剛性の関係性については未確立でした.
そこで本研究では,運動動作に適した任意の脚剛性を実現するための,剛性可変機構と関節角度の制御を行うシステムの開発を行いました.関節にばね性をもつリンク機構の先端剛性を算出する方法として剛性楕円を用いました.関節角度および関節剛性から接地点(母趾球)での剛性を矢状面上で算出し,Fig. 32のように図示するプログラムを作成しました.その形状を基に脚剛性の制御を行い,脚方向剛性を走行速度に応じた値に近づけるとともに,安定性向上のため水平方向の剛性を高めることを目標としました. 脚方向剛性の目標値は走行ピッチに応じて定めます.股関節・膝関節・足関節の角度および膝関節・足関節に搭載した剛性可変機構による関節剛性の5つの変数が脚剛性に影響を与えます.目標とする走行ピッチに適した5つの変数の組み合わせを求める方法として,最適化計算を行いました.制約条件として脚方向剛性,着地位置,剛性楕円の向きを設定し,水平方向剛性を最大化します. また,脚剛性制御を実機にて検証するため,ハードウェアについてFig. 33のように足部機構の設計変更を行いました.従来の機体では人体寸法から超過していた足幅の寸法を,人体寸法と同等の90[mm]まで縮小しました.また,接地角拡大のための足先機構の短縮を行い,接地可能な角度を従来の30°から60°まで拡大しました.さらに,センサ搭載のための設計を行い,各関節Pitch軸にはロータリエンコーダを,足部剛性可変機構にはリニアエンコーダを,足底部の接地点には力覚センサを搭載しました.これらをもとに実験を行い,実機において剛性楕円の変化に伴って脚剛性が変化することを確認しました. |
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Fig. 32 剛性楕円の概要と実際の算出結果 |
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Fig. 33 足部機構とセンサ搭載部の詳細 |
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[関連論文] ・ 萩野友惟他,"関節に剛性可変機構をもつ2足走行ロボットのための剛性楕円計算による脚剛性制御の検証",第43回日本ロボット学会学術講演会予稿集,【3E3-04】,東京都,2025年9月. |
■ 立脚中に関節弾性を変更可能な二足走行ロボット足部の開発 |
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人間の走行動作では、脚がばねのように振る舞い、走行速度の変化に応じて関節の剛性も変化することが知られています。特に足関節は、走行時の推進力や衝撃吸収において重要な役割を担っており、その弾性特性を模倣することは、より人間に近い効率的な走行ロボットの実現に不可欠です。
これまでの研究では、CFRP板ばねを用いた足部によって、剛性可変を実現する機構が作製されていました。しかし、従来の機構では、立脚中に荷重を受けながらリアルタイムで剛性を変更することが困難であり、走行中に目標剛性値を維持できないという課題がありました。 本研究では、走行中の足関節トルクと角度を計測し、板ばねの有効長を制御することで、立脚中にも剛性を変更可能な足部機構を開発しました。開発した機構は、板ばねを用いた直列弾性機構を基礎とし、有効長の変更によって関節の弾性特性を制御します。さらに、板ばねの変位を計測しながらリアルタイムに有効長を調整することで、任意の線形関節剛性を発揮することを可能としました。 高出力化に向けて、ボールねじ駆動系を改良し、2298[N]の荷重下でも0.4秒以内に板ばねの荷重点を30-70[mm]移動可能な出力を実現しました。また、荷重試験機による詳細な評価を通じて、機構の非線形性の影響を定量的に解析いたしました。 |
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Fig. 34 高出力足部機構 |
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[関連論文] ・ 大澤羽他,"立脚中に関節弾性を変更可能な二足走行ロボット足部の開発,第43回日本ロボット学会学術講演会予稿集,AC3E3-05,東京都,2025年9月. |
■ 脚弾性を活用した2足走行ロボットのための高出力発揮・トルク計測可能な剛性可変機構の開発 |
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人間の走行運動では,立脚期において,@脚部が直動ばねのように振る舞うこと,A膝関節,足関節が回転ばねのように振る舞うこと,
B各関節剛性は走行速度に応じて変化すること,などの特徴が明らかになっています.こうした特徴を模擬すべく,これまでにCFRP板ばねを用いた膝・足関節剛性可変機構を開発してきました.
しかし,質量超過などの理由から,足関節剛性可変機構については実装できていませんでした.また,これまでに開発した脚機構では,関節が発揮するトルクの計測ができず,運動の評価ができないという問題がありました. そこで,新たに関節トルク計測および関節剛性変化が可能な足部機構を開発しました. 一般的なトルクセンサでは,金属製の梁などの変形部材を設け,この変形量を計測することで,トルクを推定しています. このため,計測対象となる荷重が大きい場合,高強度・高剛性な変形部材が必要となり,大型化・高重量化の傾向にあります. 本機体の最大トルク・質量の要求仕様は人体計測データに基づいて決定しており,最大トルク190[Nm]を計測可能かつ足部質量1.0[kg]の中で搭載可能なセンサは存在しませんでした. そこで,軽量でありながら高強度で,かつ大変形を許容可能なCFRP板ばねを変形部材として利用することを考えました. 板ばねは着地時の最大荷重に耐える設計であると同時に,大変形する前提の部品であるため金属部材に比べて低剛性であることが問題になりません. 板ばねが関節弾性要素とセンサ用部材としての役割を兼ねることで,わずかな追加部品のみでトルク計測を実現することができました.変位センサには高分解能化・高速化が容易で小型軽量なひずみゲージを採用しました. また,脚部全体の要素配置を再検討し,能動動作は大腿部に搭載したモータからのパラレル駆動により行い,足関節剛性可変機構を足部に搭載することとし,新たな足部機構を開発しました. |
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Fig. 35 剛性可変機構を含む足部機構の概略図 |
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以上のことから,Fig. 18,19 のような機構を設計,製作しました.剛性可変機構・トルク計測を追加しつつも,人間の足部質量1.0[kg]に対し,0.3[kg]の超過に抑えることができました. 開発した機構について性能評価試験を行ったところ,まず,剛性変更について,走行時の遊脚時間0.4[s]で剛性変更を行えることを確認しました. また,トルク計測について,板ばねのひずみ量からの推定により,設定値を高い精度で推定可能であることが分かりました. |
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Fig. 36 足部機構のCAD図および実機 |
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[関連論文] ・ 金丸光希他,"脚弾性を活用した2足走行ロボットのための高出力発揮・トルク計測可能な剛性可変機構の開発,第41回日本ロボット学会学術講演会予稿集,3B2-01,宮城県,2023年9月. |
■ 高出力,剛性変化可能で人間と同等の質量特性を目指した下腿機構の開発 |
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先行研究や当研究室で実施した人体運動計測により,走行中の人間の脚は立脚期において圧縮ばねのように振る舞い,また,その脚の膝関節,足関節には回転ばねと同じような
ばね特性を有していることが分かっています.そして,そのばね特性は走行速度に応じて変化しています.これらの特徴を模擬するべく,
これまでの研究では各関節に CFRP製の板ばねを用いた脚の剛性可変関節機構を開発・搭載しました.
しかしながら,昨年度開発した足関節機構では,これらの要求を満たすために質量・サイズがともに人間のものと比べて重く大きくなってしまいました.
そこで,新たに関節トルク,可変な関節弾性を満たしながらも軽量な足関節機構を開発しました.
人間の足関節は走行速度2.0〜5.0[m/s]において関節トルク190[Nm],関節弾性250〜325[Nm/rad]程度発揮しており,下腿の質量は3.3[kg]程度になっています. これらを実現するために,昨年度ではダブルモータや剛性可変機構,4節リンクを用いていましたが,それらを下腿機構内に収めるには重くなってしまうため下肢全体の配置について再検討を行いました. 具体的には下腿機構に搭載していたモータを比較的質量の余裕がある大腿部に再配置することにより下腿機構を軽量化することができます. また,4節リンクでは設計パラメータが少なく板ばねが長いままとなってしまっているため,さらに板ばねを短くできるように5節リンクを用いました. これを能動動作,受動動作を行う足関節機構に搭載するために,4節リンク機構を複合したFig. 7のような 5節4節複合リンク機構を考案しました. |
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Fig. 37 5節4節複合リンク機構を用いた足関節機構の概略図 |
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以上のことを考慮してFig. 8,9 のような機構を設計,製作しました.特に5節リンク機構の導入により板ばねの長さが昨年度の物と比べて3倍程度短くすることができるようになりました. これらの開発した機構について性能評価試験を行ったところ,モータドライバの出力可能電流の限界に達してしまったために,人間の出力トルクを満たすことはできませんでした. そして人間の下腿と比較して1.5[kg]程度重いままとなってしまいました.しかし,昨年度と比較すると性能を大きく下げることなく0.7[kg]程度軽量化することができ, 5節リンク機構を用いることに有用性があることを確かめることができました. |
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Fig. 38 足関節機構のCAD図 |
Fig. 39 製作した足関節機構 |
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[関連論文] ・ 黒岩祐志他,"骨盤運動に着目した2足走行ロボットの開発(第23報:高出力,剛性変化可能で人間と同等の質量特性を有する下腿機構),第37回日本ロボット学会学術講演会予稿集,3L3-03,東京都,2019年9月. |
■ 脚弾性を活用した膝剛性可変機構の開発 |
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これまでの研究で,ヒューマノイドロボットの関節剛性を能動的に変化させる機構を開発し,
人間の走行動作における関節の回転ばね特性を模倣する試みが進められてきました.
しかし,従来の脚機構では,膝剛性可変機構の搭載,人間と同等の質量特性,
および走行時の高出力発揮を同時に満たすことが困難でした.
このため,新たに膝剛性可変機構を開発しました.
従来の剛性可変機構は荷重点を動かす方式が一般的でしたが, 本研究ではFigに示す固定点を変化させる方式を採用しました. この方式では,固定点と荷重点の間の距離を変化させることで剛性を制御し, 必要に応じて関節剛性無限大を実現することも可能です. 従来の機構には,剛性発揮時に固定点が動く問題や, リニアガイドと構造部材が板ばねとともに曲がる問題が存在していました. 本研究ではこれらの課題を解決するため,リニアガイドを膝関節自体に配置し, 下腿フレーム全体で荷重を支える構造としました. これにより,構造部材の変形を防ぎ,小型かつ軽量な設計が実現しました. Figに設計した機構を示します. 立脚時における剛性不変性が衝撃試験によって確認され, 板ばねの柔軟性による衝撃吸収効果も実証されました. さらに,板ばねによる出力向上効果を検証するための実験では, 直列弾性要素が走行時のエネルギー効率向上に寄与し,関節の高出力化が実現されました. これにより,膝関節のトルクおよび角速度の向上が確認されました. |
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Fig. 40 固定点移動式剛性可変機構概略図 |
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Fig. 41 膝剛性可変機構実機 |
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[関連論文] ・ 金澤政宜他,"脚弾性を活用した 2 足走行ロボットのための膝剛性可変機構の開発",第42回日本ロボット学会学術講演会予稿集,【3I3-03】,大阪府,2024年9月. |
■ 脚弾性を活用した2足走行ロボットのための軽量・高出力発揮可能な脚機構の開発 |
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これまでの研究で,走行中の人間の脚における膝関節,足関節の回転ばね様のばね特性を再現するために,CFRP製の板ばねを用いた剛性可変機構を開発してきました.
しかしながら,これまでに開発した脚では,この剛性可変機構の搭載,人間の走行時の関節出力発揮,人間と同等の質量特性は並立できておらず, 人間と比較し重く低出力なものとなってしまっていました.そこで,上記の要件の並立を目指し,新たに脚機構を開発しました. 人間の脚の各部位における質量は,大腿部において8.4[kg],下腿部において3.3[kg],足部において1.0[kg]程度であり,末端においてより軽量となっています. 2018/19年度に開発された機体では,この質量特性を再現するために下肢の動力伝達系を一新しました.5節リンクを導入し, 足関節アクチュエータを大腿部に移設したことで下腿質量を4.8[kg]まで低減しましたが,依然として人体の質量特性の再現には不十分でした. そこで,下肢の機械要素配置と動力伝達系について再検討を行い,新たに非干渉リンク機構を開発・搭載しました. 非干渉リンク機構は,関節A(膝関節)を経由し関節B(足関節)の2軸直交 動作を行うものであり,関節A,Bの動作は干渉しません. 通常,関節Aを経由してその先の関節Bを駆動する場合,関節Aの動作と干渉して関節Bの角度が変わってしまいます. 干渉を補正する制御を行う場合もありますが,弾性要素によって能動要素を超える高出力動作を目指す本研究では, 弾性分を含めた関節角度の補正を高速・高トルクで行う必要があり十分な補正ができないため,本機構による動力伝達が有効です. パラレル機構と組み合わせ,比較的低出力かつ軽量なアクチュエータで大腿部から足関節を2軸直交駆動することで,軽量な脚を実現しました. さらに,フレーム構造を刷新し,比強度が高い単一の部材を骨格に使用する内骨格化を行いました. 走行時の衝撃荷重モードを複数想定し,着地時におよそ3000[N]と想定される衝撃荷重に関してシミュレーションを実施しました. これによって,最適な骨格形状として長円断面のパイプを選定しました. |
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Fig. 42 足関節角度への膝関節角度の干渉 |
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Fig. 43 非干渉リンク機構の概略図 |
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以上を踏まえ,Figのような脚機構を設計・製作しました.質量は大腿部で9.8[kg],下腿部で2.8[kg],足部で1.3[kg]となっており,人体の質量特性との差異を僅かに抑えるとともに,従来質量超過の著しかった下腿は大幅に軽量となりました. 開発した非干渉リンク機構について評価を行ったところ,膝関節角度と干渉せずに足関節角度が常に指示値を保つことができ,非干渉リンク機構の有用性が示されました. |
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Fig. 44 製作したCFRPパイプ |
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Fig. 45 脚機構実機 |
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[関連論文] ・ 津野太希他,"脚弾性を活用した2足走行ロボットのための軽量・高出力発揮可能な脚機構の開発",第41回日本ロボット学会学術講演会予稿集,3B2-02,宮城県,2023年9月. |
■ トポロジー最適化を用いた高耐荷重・軽量な腰部機構の開発 |
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これまでの研究で,走行中の人間の骨盤揺動による衝撃吸収・蹴りだしの補助,
加えて脚部のばね性を利用した共振運動を再現するために,
ハーモニックドライブを用いた多自由度機構を開発してきました.
しかし,これまでに開発した骨盤では,2000[N]の着地衝撃に耐え得る強度を確保するため,
機体重量が人間の腰部重量である11.4[kg]の1.6倍であり,人間の質量特性を再現できていないませんでした.
重量の超過は着地衝撃の増加や,運動時の出力不足の原因ともなります.
そこで,耐荷重性の向上と軽量化を目的とし,アクチュエータと減速機を再検討し,
トポロジー最適化を応用したフレーム構造を開発・搭載しました.
人間の走行時には1000[W]の出力を要します. これは,当研究室で開発された2足歩行ロボットであるWABIAN-2Rの出力が150W程度であることからわかるように大出力であり, 当研究では脚のばね性による弾性エネルギーの活用をする一方,大減速によりモータトルクを増幅しています. このために搭載されたハーモニックドライブはフレクスプラインと呼ばれる薄肉歯車の弾性変形を利用した減速機で, 高減速比,高効率,低バックラッシュなどのメリットがありますが, その構造上,走行時の着地衝撃では摩耗や破断のリスクがあります. そこで,大減速を取りつつ耐荷重性の大幅な向上が可能なウォームギアを搭載しました. このとき,モータと合わせた選定・設計を行い,耐荷重性と軽量化の両立を図りました. 一般的に,出力と重量はトレードオフの関係にあり,要求出力を達成するモータ出力と減速比を複数パターン比較することで, 全重量が最小となる設計を実現しています. さらに,フレームはトポロジー最適化シミュレーションを用いた形状を採用しました. 従来のフレーム設計でも肉抜き等の工夫は行われてきましたが, 走行時の荷重に対して最適な形状を解析的に求めることで,耐荷重性を保ちながら重量の削減を目指しました. 力の解析は人間の走行時の力学モデルを基に実施し, 走行時の荷重条件における最適な位相の分布を求積しました. 以上を踏まえ,Figのような骨盤機構を設計・製作しました. 各関節における耐荷重性は平均で3.7倍に向上し,質量は13.8[kg]と22[%]の削減を達成しました. 開発した機体を用いた跳躍実験を実施し,機体が走行時に必要な出力を発揮しつつ着地衝撃に耐えうることを確認しました. 本設計手法の適応により,機体全体の更なる軽量化が可能であることが示されました. |
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Fig. 46 力学モデルにおける力の解析 |
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Fig. 47 トポロジー最適化の様子 |
Fig. 48 トポロジー最適化を応用したフレーム形状 |
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Fig. 49 骨盤機構実機 |
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[関連論文] ・ 奥山秀伸他,"骨盤運動に着目したヒューマノイドのための高耐荷重・軽量な腰部機構の開発",第42回日本ロボット学会学術講演会予稿集,【3I3-05】,大阪府,2024年9月. |
■ 2足走行ロボットへの搭載に向けた油圧駆動股関節機構の開発 |
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走行中の人間の股関節において,膝関節や足関節に見られるようなばね特性はあまり見られず,膝関節や足関節よりも大きい関節トルクを発揮することが分かっています.
しかし,大きな関節トルクを発揮するには電磁モータと減速機が大型化する必要があり,現行の走行ロボットの股関節機構は,人間と同等の質量配置を満たすアクチュエータのうち最大のものを用いており,
人間が歩行から走行に遷移する境界といわれる移動速度約2.0[m/s]時の股関節の関節トルク100[Nm],および関節角速度4.5[rad/s]の発揮が実現できていませんでした.
そこで,股関節の出力向上のために油圧駆動を適用した股関節機構を開発しました.
油圧駆動は高出力発揮が期待でき関節から離れた箇所に油圧機器を配置できる点で,減速機を用いた伝達機構と比較してレイアウト性が高いです. さらに,油の分流・合流性により一台のポンプから複数の関節への出力配分が可能です. これらの油圧駆動の利点を活かし,両脚に対して左右で独立に実装した油圧回路を電磁切換弁により接続し,出力配分が可能な2足ヒューマノイドロボット向け油圧回路を提案しました(Fig. 10). また,油圧アクチュエータには油圧モータと比較して質量対出力が大きい油圧シリンダを採用し,要求可動角の実現のためには4節リンク機構を採用しました(Fig. 11). リンク機構の角度変化は一般的にシリンダストロークに対して非線形となるため,関節角度のフィードフォワード制御とフィードバック制御が容易になるように,リンク特性を最小二乗法により線形に近づけました. これにより,シリンダストローク150[mm],可動角120[deg]に対して最大差が3.9[deg/mm]となるリンク比を得ました. 以上の検討から開発した油圧駆動股関節機構(Fig. 13,Fig. 14)を評価するため,最大発揮トルクと角速度を確認する実験を行いました. 関節トルクは要求仕様を満たしたものの,関節角速度は要求仕様を満たせませんでした. これは油圧回路の連動による流量増加を考慮した配管の設計を行わなかったため,流量増加時に配管抵抗が上昇し,ポンプが最大回転速度に到達する前にポンプを駆動するモータの出力上限に到達したためです. |
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Fig. 50 提案油圧回路 |
Fig. 51 4節リンク機構 |
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Fig. 52 股関節機構CAD図 |
Fig. 53 製作した股関節機構 |
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[関連論文] ・ 水上英紀他,"骨盤運動に着目した2足走行ロボットの開発(第24報:2足走行ロボットへの搭載に向けた油圧駆動股関節機構の開発),第37回日本ロボット学会学術講演会予稿集,3L3-04,東京都,2019年9月. |
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共同研究者である早稲田大学スポーツ科学学術院川上先生に感謝いたします. 本研究は早稲田大学理工学研究所および早稲田大学ヒューマノイド研究所,総合機械工学もの・ひと・こと研究所,早稲田大学重点領域研究機構アクティヴ・エイジング研究所, 早稲田大学ヒューマンパフォーマンス研究所,早稲田大学次世代ロボット研究機構の下で実施された.本研究で用いられた3DCAD はソリッドワークス・ジャパン株式会社より提供され,ケーブル・コネクタは大電株式会社,複合領域物理モデルシミュレータ MapleSim はサイバネットシステム株式会社(開発元:Maplesoft 社)より提供された.また,本研究の一部は文部科学省の科学研究費補助金(25709019, 17H00767),文部科学省グローバル COE プログラム「グローバルロボットアカデミア」,みずほ学術振興財団,早稲田大学特定課題研究助成費(2015S-76)の支援を受けた.各社・官公庁に感謝致します. |