オーラル班の紹介

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オーラル・リハビリテーション・ロボット WAO-2
〜WAO-1R (Waseda Asahi Oral-Rehabilitation Robot No.2)〜
WAO-2_title.jpg(6043831 byte)



1.はじめに

2.実施体制

3.オーラル・リハビリテーション・ロボット

4. ロボットの制御とマッサージ軌道の生成

5. 謝辞













1. はじめに

  高齢化社会やストレス社会と呼ばれる現代では、加齢やストレスによっておきる顎顔面(口と顔の周囲)の疾患が増えています。 顎関節症、口腔乾燥症(ドライマウス)、嚥下障害は、その代表的なものです。 これらの疾患の有病者は、潜在的な方も含めますと日本国内で1000万人を越えるといわれ、その半分程度の方については、治療の必要があるといわれています。 しかも、これらの疾患の多くは慢性化する傾向にあるため、継続的な治療あるいはリハビリテーションが必要となります。 顎顔面に対するマッサージ療法は、先に述べた3つの疾患に共通した有効な治療法の1つです。顎顔面に対するマッサージ療法とは施術者(理学療法士、医師、歯科医師)によって、咀嚼筋や耳下腺、耳下腺管そして舌骨筋に対して圧迫や軽擦等の刺激を与えることで行われています。しかし、これらの治療を受けることができる医療機関は少なく、多くの患者は家庭療法としてマッサージを行っています。

2. 実施体制

  本研究は岐阜・大垣地域ロボティック先端医療クラスターの支援のもと、 早稲田大学高西淳夫研究室と朝日大学歯学部(勝又明敏准教授)によって進められています。 また平成19年4月より、歯科用レントゲンメーカーである朝日レントゲン工業株式会社を共同研究パートナーに向かえ、 オーラル・リハビリテーション・ロボットの事業化への取り組みを進めています。 現在、鶴見大学歯学部、愛知学院大学歯学部などの協力医療機関に対して、オーラル・リハビリテーション ・ロボットを設置し、臨床応用試験を行っています。



Fig.1 実施体制


3. オーラル・リハビリテーション・ロボット

  われわれは熟練した施術者によるマッサージを機械的な動作として再現可能なロボットを開発し、 新たな理学療法機器として医療現場に提供することを着想しました。 私たちは顎顔面マッサージを行うロボットをオーラル・リハビリテーション・ロボットと名づけ、 その開発に取り組んできました。


Waseda Asahi
Oral-Rehabilitation Robot
-No.1
( 2006-2007 )

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Waseda Asahi
Oral-Rehabilitation Robot
-No.1 Refined
( 2007-2008 )

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Waseda Asahi
Oral-Rehabilitation Robot
-No.2
( 2008-2009 )

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4. ロボットの制御とマッサージ軌道の生成

  顔面形状に沿ってマッサージを行うために、施術に先立ちオフラインで 目標マッサージ軌道(xTT)を生成します。目標マッサージ軌道(xTT)は顔形状に沿っ た軌道(xS)と顔の弾性変形量(xCE)から、導出されます。
 施術に先立ち、導出された目標軌道に従って、逆運動学計算によりロボットの各関節の駆動角度が計算されます。 施術中のロボットはまず、計算されたとおりに各関節を駆動し、目標軌道にそってマッサージを行うことを試みます。 このときロボットは、仮想コンプライアンス制御によって、プランジャが対象物から受ける反力が大きくなりすぎないよう 補正量(xCC)をリアルタイムに計算します。そして、その補正量にもとづき、適宜アームの駆動角度を修正 しながらマッサージを行います。
 以下にオフラインでのマッサージ軌道の生成方法と、オンラインでのロボットの 制御方法について詳しく説明します。


Fig.2 制御システム



4.1 Facial shape line(XS )

  顔形状軌道(xS)は頭部のCT画像から作成しました。 まず、CT画像より顔の特徴点6点を指定し、次にそれらの点をスプライン補間し、 顔形状に沿った軌道(xS)を算出します。


Fig.3 頭部のCT画像


4.2 Elasticity compensation(XCE )

  顔面組織に一定の荷重を与えるためには、顔形状軌道(xS)から法線方向に 一定量だけ押し込む必要があります。われわれは実験により、頬脂肪、咬筋、下顎骨、 耳下腺の弾性モデル(荷重と変形量の関係)を作成しました。この実験では、顔の頬脂肪、 咬筋、下顎骨、耳下腺に荷重を加え、その状態で顔の形状を非接触の三次元計測装置を用いて計測しました。 そして、無荷重の場合の顔面形状と荷重を加えた場合の顔面形状の比較を行い、その結果から各部位の弾性モデル を作成しました。マッサージ軌道を生成する際は、このモデルを使用して、目標荷重を顎顔面に作用させるのに必 要な押し込み量(xCE)を算出し、それをもとに目標軌道(xTT)を生成します。


Fig.4 顔の表面形状


4.3 Virtual compliance control(XCC )

  WAO-1には仮想コンプライアンス制御が実装されており、患者の顔面形状にそってアームを駆動することが可 能となっています。仮想コンプライアンス制御とは、力センサによって計測した力をもとに、剛体でできているアームを、 バネとダンパが実装されているかのごとく反力にならって動作させる制御方法です。WAO-1は、プランジャの根元に実装さ れた6軸力覚センサ(ニッタ株式会社製)によって、プランジャが顎顔面から受ける力を計測し、Fig.11に示す式によって、 5[ms]ごとに補正量(xCC)を計算し、その値を目標マッサージ軌道(xTT)に加算することで、患者の 顔面にそってアームを駆動します。 この制御によりWAO-1は、マッサージ軌道の生成に使用した顔面形状と、異なる顔面形 状を有する患者に対しても、無理な力を与えることなくマッサージを行うことが可能となっています。




Fig.5 6軸力覚センサ(ニッタ株式会社製)

Fig.6 仮想コンプライアンス制御



仮想コンプライアンス制御(MPG形式 5秒 1.0MB)



5. 謝辞

  本研究は文部科学省知的クラスター創成事業の援助を受けた。 臨床医の立場からわれわれに適切なアドバイスをくださった朝日大学の勝又先生、 愛知学院大学の泉先生,鶴見大学の小林先生,五十嵐先生に感謝いたします。 また、3DCADソフトウェアをご提供して頂いた ソリッドワークス・ジャパン(株) に感謝いたします。
本研究は早稲田大学の人を対象とする研究等倫理審査委員会の許可を得て実験を行っています。 (承認番号 理06-014)

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