極限環境下で作業可能な災害対応ロボットの開発


  1. 研究の目的と概要
  2. ロボットシステム
  3. 様々な移動様式の実現
  4. 謝辞

2D_Disaster_Response_Robot_2014

1. 研究の目的と概要

近年,世界中の様々な地域で地震や津波など多くの災害が発生しています.災害発生時には現場の被害状況の調査や復旧作業が必要になります.そのため,このような環境下では二次災害の防止や作業負担の軽減などの観点から人間に代わって作業できるロボットを使用することが有効であると考えられます.
 そこで本研究室では,内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「タフ・ロボティクス・チャレンジ」の一環として脚ロボットのプラットフォームの開発を担当しています.研究としては移動のための脚を有し2足歩行や4足歩行,あるいは胴体を接地させた腹ばい移動など複数の移動様式を有することで,狭隘部の通過や不整地での安定移動などさまざまな状況に対応しやすい多様なロコモーションを実現し,極限環境に対して高いアクセシビリティを有する4肢ロボットの開発を目指しています.

4肢ロボットのコンセプト

2. ロボットシステム

WAREC-1(2015)

WAREC-1の肢には計7自由度(肩・股関節に3自由度,肘・膝関節に1自由度,手・足関節に3自由度)を有した4肢共通ロボットです.
中空高出力アクチュエータユニットの搭載により高出力を実現し,分散制御の実装により省配線化を実現しています.

WAREC-1(WAseda REsCuer-NO.1)

自由度配置図




自由度
肩・股関節:3DoF x 4肢
肘・膝関節:1DoF x 4肢
手・足関節:3DoF x 4肢
合計:28
センサ
6軸力覚センサ
IMU
アクチュエータ DCモータ
質量[kg] 150

■ 中空高出力アクチュエータユニットの開発

フレームレスモータと波動歯車減速機を組み込んだ高出力アクチュエータユニットを開発しました.災害対応ロボットでは極限環境下での
移動・作業が求められることから配線の露出を減らすために配線を通すための中空構造も有しています.


アクチュエータユニット分解図

アクチュエータユニット断面図


[関連論文]
・木村駿介,酒井伸明,橋本健二,孫瀟,小泉文紀,濱元伸也,寺町知峰,松澤貴司,高西淳夫,“極限環境下で作業可能な災害対応ロボットの開発(第10報:中空構造を持つ高出力アクチュエータユニット)”,第34回日本ロボット学会,学術講演会予稿集,2C2-02.


■ 路面接地可能な胴体構造の開発

腹ばい動作を行う際に胴体のみで安定した接地が可能な凹形状の胴体を開発しました.露出を防ぐために電装系を胴体内部に収められる構造になっております.

胴体部画像

胴体部断面図


[関連論文]
・酒井伸明,木村駿介,橋本健二,孫瀟,小泉文紀,濱元伸也,寺町知峰,松澤貴司,高西淳夫,“極限環境下で作業可能な災害対応ロボットの開発(第8報:匍匐移動を目的とした4肢ロボットの胴体構造)”,第34回日本ロボット学会,学術講演会予稿集,2C1-06.

プロトタイプ機(2014)

       肢には計7自由度(肩・股関節に3自由度,肘・膝関節に1自由度,手・足関節に3自由度),体幹には1自由度を有しています.
       災害対応ロボットは4肢が共通の構造となっており,1肢が故障した際にも残りの肢を用いて移動することが可能になります.

4肢ロボットのプロトタイプ機(2014)

自由度配置図




自由度
肩・股関節:3DoF x 4肢
肘・膝関節:1DoF x 4肢
手・足関節:3DoF x 4肢
体幹:1DoF
合計:29
センサ 6軸力覚センサ
アクチュエータ DCモータ
質量[kg] 110

2足歩行

4足歩行



腹ばい移動


本ロボットの最大の特徴はエンドエフェクタの形状です.エンドエフェクタは3つの溝を有しており,それぞれ脚として使う場合と腕として使う場合に応じて使い分けています.



エンドエフェクタ



エンドエフェクタ(手として使う場合)



エンドエフェクタ(足として使う場合)


[関連論文]
・橋本健二,孫瀟,瓜生和寛,小泉文紀,濱元伸也,寺町知峰,松澤貴司,高西淳夫,“極限環境下で作業可能な災害対応ロボットの開発(第1報:極限環境の分類と4肢ロボットの基本構想)”,日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会2015,予稿集,1A1-T03.
・松澤貴司,寺町知峰,橋本健二,孫瀟,瓜生和寛,小泉文紀,濱元伸也,高西淳夫,“極限環境下で作業可能な災害対応ロボットの開発(第2報:多様な移動様式が可能な4肢ロボットと垂直はしご昇降実験)”,第33回日本ロボット学会,学術講演会予稿集,3K1-05.
・寺町知峰,濱元伸也,橋本健二,孫瀟,瓜生和寛,松澤貴司,小泉文紀,高西淳夫,“極限環境下で作業可能な災害対応ロボットの開発(第3報:桟や支柱を用いた垂直はしご昇降の実現)”,第33回日本ロボット学会,学術講演会予稿集,3K1-06.
・Takashi Matsuzawa, Kenji Hashimoto, Xiao Sun, Kazuhiro Uryu, Ayanori Koizumi, Shinya Hamamoto, Tomotaka Teramachi and Atsuo Takanishi, "Development of Disaster Response Robot with Commonly Structured Limbs and Experiment in Climbing Vertical Ladder", International Conference on Advanced Mechanics, pp.142-143, 2015.

3.様々な移動様式の実現

極限環境の分類

極限環境は形状に着目すると「凹凸度」,「狭隘度」,「傾斜度」の3つの指標に分類できると考えられます.この中から「凹凸度」が高く2足歩行などの移動様式では踏破が困難である瓦礫などの不整地,「傾斜度」が最も高く脚ロボットでは踏破が困難である垂直はしごに着目しました.

Classification_of_extreme_environments

極限環境の分類

腹ばい移動の実現

■ 腹ばい移動の提案

災害現場のようながれきが山積し崩壊する可能性がある環境ではロボットが転倒し故障する危険性があります.このようなリスクを低減するために,従来の2足歩行・4足歩行よりもさらに低重心で移動可能な腹ばい動作を提案しました.シミュレーションで不整路面のモデルを作成して4脚ロボットに腹ばい動作を適用し,不整路面において移動可能であることを確認しました.


腹ばい移動の歩容


[関連論文]
・橋本健二,小泉文紀,松澤貴司,孫瀟,濱元伸也,寺町知峰,酒井伸明,木村駿介,高西淳夫,“極限環境下で作業可能な災害対応ロボットの開発(第4報:4肢ロボットの匍匐移動法の提案)”,日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会2016,予稿集,1A2-09b7.


■ 腹ばい移動の進行方向制御・足先軌道修正制御

不整路面での腹ばい移動時の路面の崩壊によりロボットの進行方向が意図せず変化し,目標方向に対する進行方向のずれが発生します.そこで,左右の脚の繰り出し量を調整し,目標方向と進行方向のずれを低減する制御を開発しました.
また,機体が傾いているとロボットの足先と路面が意図しない衝突を起こし,腹ばい移動が妨げられる恐れがあります.そこで,ロボットに搭載したセンサ情報をもとに足先の軌道を変更する制御を開発しました.



足先軌道修正制御


[関連論文]
・松澤貴司,小泉文紀,橋本健二,孫瀟,濱元伸也,寺町知峰,木村駿介,酒井伸明,高西淳夫,“極限環境下で作業可能な災害対応ロボットの開発(第5報:4肢ロボットの匍匐移動における進行方向制御)”,日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会2016,1A1-09b3.
・松澤貴司,小泉文紀,橋本健二,孫瀟,濱元伸也,寺町知峰,酒井伸明,木村駿介,高西淳夫,“極限環境下で作業可能な災害対応ロボットの開発(第9報:4肢ロボットの匍匐移動時の足先軌道修正制御)”,第34回日本ロボット学会学術講演会予稿集,2C1-07.


垂直はしご昇降の実現

■ 3点支持によるはしご昇降の実現




[関連論文]
・Xiao Sun, Kenji Hashimoto, Ayanori Koizumi, Shinya Hamamoto, Takashi Matsuzawa, Tomotaka Teramachi and Atsuo Takanishi, "Event-based climbing motion planning for a quadruped robot ", International Conference on Advanced Mechanics, pp.78-79, 2015.


■ 2点支持での安定かつ高速なはしご昇降の実現

はしご上での安定判別規範を確立することでより高速に昇降できる2点支持によるはしご昇降を実現しました.また1桟あたり10秒での昇降が可能となりました. 従来の3点支持によるはしご昇降では1桟あたり120秒かかっていたため12倍で昇降することを実現することができました.




[関連論文]
・濱元伸也,吉田雄貴,橋本健二,孫瀟,寺町知峰,松澤貴司,木村駿介,酒井伸明,高西淳夫,“極限環境下で作業可能な災害対応ロボットの開発(第6報:安定判別規範を用いた2点支持による垂直はしご昇降の実現)”,第34回日本ロボット学会,学術講演会予稿集,2C1-01.


■ 経路・時間の独立計画が可能なエンドエフェクタ軌道の実現

従来のはしご昇降時のエンドエフェクタ軌道は直線的な軌道であり,エンドエフェクタ軌道の方向転換時に各関節に大きな負荷がかかっておりました.そこで,エンドエフェクタの経路と時間計画を分離しそれぞれ独立で計画することで速度・軌道を連続かつ滑らかにして関節にかかる負担を減らすことを実現しました.



[関連論文]
・X. Sun, K. Hashimoto, S. Hamamoto, A. Koizumi, T. Matsuzawa, T. Teramachi and A. Takanishi, "Trajectory Generation for Ladder Climbing Motionwith Separated Path and Time Planning", IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, pp.5782-5788, 2016.
・孫瀟,林翔太,橋本健二,小泉文紀,濱元伸也,寺町知峰,松澤貴司,木村駿介,高西淳夫,酒井伸明,“極限環境下で作業可能な災害対応ロボットの開発(第7報:垂直はしご昇降動作における経路・時間分離かつ経路最短なエンドエフェクタ軌道計画)”,第34回日本ロボット学会,学術講演会予稿集,2C1-02.


■ はしご昇り切りの実現

はしごの一番上の桟に到達した後,支柱の間を通り抜けてキャットウォークに乗り移る昇り切り動作を実現しました.




2足歩行の実現

多様なロコモーションの一つとして2足歩行の実験を行い,歩幅100[mm],歩行周期30[s]での歩行を実現しました.




重量挙げの実現

このロボットは4肢が共通構造となっているため,腕も脚と同様に強い力を発揮することができます.この実験では,ロボットの自重以上の負荷である120[Kg]のおもりを持ち上げる動作を実現しました.



4. 謝辞

2015年度の研究では,総合科学技術・イノベーション会議により制度設計された革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「タフ・ロボティクス・チャレンジ」により,科学技術振興機構を通して委託され,早稲田大学理工学研究所および早稲田大学ヒューマノイド研究所,早稲田大学次世代ロボット研究機構の下で実施されました.
   2014年度は,主に三菱重工業株式会社の支援のもと,早稲田大学ヒューマノイド研究所三菱重工業株式会社の共同研究として実施されました.
   本研究で用いられた3DCAD はソリッドワークス・ジャパン株式会社より提供され,ケーブル・コネクタは大電株式会社,実験に用いたクレーンは株式会社キトーより提供されました.


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Last Update: 2016-Nov
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