研究目的

技術の進歩に伴い,ロボットはわれわれの生活に欠かせないものとなってきています.21世紀に入ってから,人間型ロボットが 次々と登場し,パーソナルロボットも身近なものになってきています.人間型ロボットだけに限らず,人間の心を癒すペット型ロボッ ト,人に代わって危険な作業や悪環境下で作業をする極限作業ロボット,手術や治療を行う医療ロボット,食事や患者のケアを行う看 護ロボット,宇宙空間で働くロボットなど,多くのロボットの活躍が家庭や現場で期待されています.

このような社会を目前にして,「人間とロボットの共生」というテーマについて研究することは,ますます重要となってきます.そ こで,私たちは「人間とロボットが共生するために必要な要素は何か?」ということを探しています.この「共生に必要な要素」を見 つけ出すには人間とロボットによる相互作用実験を行えば良いのですが,人間は先天的,後天的な要因により個体差が大きく,さらに 行動が複雑であるため,その心理状態を的確かつ定量的に把握することは困難です.技術的にもそのような実験を行うまでにはまだ時 間がかかると思われます.そこで本研究は「生物とロボットを実際に共生させる」ということに主眼を置き,人間より進化的に古く, 比較的行動が単純であるラットを用い,ラットとラット形ロボットによる相互作用実験を繰り返すことで,共生における効用と問題の 基本的枠組みを明らかにすることを目的としています.

Communication Between a Creature and a Robot

Fig. 1 Communication Between a Creature and a Robot


これまでの研究

1998年
  • ラットと同等の運動性を有し複数の刺激提示が可能なロボットWM-4 を開発
  • WM-4による餌場教示に成功
1999年
  • ラットの乗りかかり行動を模倣可能なロボットWM-5を開発.
  • WM-5からラットに対する乗りかかり行動が,ラットのロボットに対する興味を喚起する作用を持つことを確認
2000年
  • ロボットにラットの匂いを付着させることで,ラットのロボットに対する興味が飛躍的に強まることを確認
2001年
  • ラットにロボット呼出し行動を学習させることに成功
2002年
  • 2個のレバーを有するロボットWM-6を開発
  • 長時間(24時間以上)にわたって,ラットとロボットによるインタラクション実験を実施可能な実験システムを開発
  • ロボットの行動によるラットの行動周期の制御に成功